ロシアが欧州への天然ガス供給を停止したため、企業や政府は天然ガスを備蓄し、消費を抑え、供給源を多様化している。だが、この冬に天然ガスが不足するかどうかは、「天候」という評価不可能な変数に左右されるかもしれない。気象学者によれば、欧州で暖房シーズンが始まれば、例年より穏やかで乾燥した天候が予想され、ガス不足の回避に役立つ可能性があるという。だが予想外に厳しく長い冬が到来すれば、暖房用のガス需要が増大し、政府がガス配給を行うことになり、すでに脆弱(ぜいじゃく)な欧州経済に支障をきたす恐れがある。風と雨は、欧州諸国が安価な再生可能エネルギー源からどれだけ電力を生産できるかも左右する。過去の軍事的な対立でも天候は重要な役割を果たした。1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦は悪天候で2週間遅れで行われ、ロシアに侵攻したナポレオンとヒトラーは寒さが原因で敗北した。現在、ロシア政府と欧米が対峙(たいじ)している経済戦争では、この冬に欧州が天然ガスを使い果たすかどうか、電力価格の高騰が経済にどれだけのダメージを与えるか、天候が鍵を握っている。