壊れた風呂の修理を認めず
自己負担での転居を提案

狭くて足を延ばせない風呂桶。洗い場はコンクリートむき出しだ狭くて足を延ばせない風呂桶。洗い場はコンクリートむき出しだ

 この写真は、西日本のある自衛隊官舎の浴室の写真である。自衛隊官舎で今もよく見られるのがバランス釜(湯沸かし器)と呼ばれる装置が横についた風呂だ。バランス釜で幅をとられるため、風呂釜が狭くなり足を伸ばすことはできない。さらに浴室の洗い場はコンクリートむき出しだ。

 この官舎に住む自衛隊員の話では、入居時にはすでにバランス釜が壊れて使えなかったそうだ。仕方なく修理申請を出したが、それから半年がたった後、管理する業務隊から設備の新規交換は認められないと無慈悲な回答が返ってきた。代替案として、他の官舎への移動を認められたが、それに関わる引っ越しの費用は自己負担という非情な対応だったという。

 自衛隊は全国組織であり都心や市街地にも拠点はあるが、離島や高地にレーダー監視拠点やと通信拠点を持ち、人里離れた場所にも所在する。災害派遣やテロ、有事に対処するために、独身の自衛隊員などは、営内の隊舎に居住義務がある。基本的に営内隊舎は独身者用、営外にある官舎は家族や異動勤務者用である。自衛隊幹部は営外居住が義務づけられ、転勤のたびに官舎や賃貸住宅をさがすことになる。

 しかし、自衛隊の幹部は2、3年に一度、全国異動がある。そのため、単身赴任する機会の多い幹部は、入居費の安い官舎に住むことが多い。さらに、自衛隊幹部の緊急参集要員は軍事侵攻や災害が起きた場合に徒歩で自衛隊施設に出勤できるように、2km以内に居住を義務づけられている。それ以外の隊員も自衛隊施設近くに居住することが求められる。

 住宅賃料が低い地方都市であれば、居住義務範囲内で民間の賃貸住宅を探せるが、都市部の賃貸住宅は高額だ。官舎は保証金、敷金もないこともあり、頻繁に転勤する幹部自衛官は老朽化していても都市では官舎を選ぶしかない。エレベーターが付いた新築物件もわずかにあるが、大半は昭和に建てられた物件だ。冒頭で触れた官舎のバランス釜が故障するなどの設備老朽化の問題は、氷山の一角でしかない。文句の言えない自衛隊員や公務員用の住宅がどれほどひどい状態か、以下にお伝えする数々の写真を見ていただきたい。