有事に果たす
自衛隊病院の役割

昨年3月に閉鎖された自衛隊佐世保病院昨年3月に閉鎖された自衛隊佐世保病院

 全国に16カ所あった自衛隊病院のうち、2022年3月、「別府・大湊・舞鶴・佐世保・岐阜・三沢」の自衛隊6病院が廃止された。人材と医療資源を人口の多い都市に集中させ、自衛隊病院の拠点化・高機能化を図る目的とされる。

 3月17日には自衛隊舞鶴病院、自衛隊別府病院が廃止され、同19日には佐世保市にある自衛隊佐世保病院が閉鎖された。今回の6病院の廃止により、地方都市にある自衛隊病院の多くは失われ、廃止された地域の自衛隊病院の病床はゼロとなった。

 自衛隊病院は通常の医療を含め、感染症対応、銃創や爆創などの外傷、さらに核・生物・化学兵器(NBC兵器)による攻撃による負傷者に対する診察や処置能力を有する病院である。

 感染症指定医療機関でもある自衛隊中央病院や防衛医大病院を中核として、新型コロナ感染症患者の受け入れも行っている。また、戦力である自衛隊員の健康状態や運動能力の管理を行い、有事には戦時治療、野戦病院となる目的で設置された。国防の任に就く自衛隊員の戦時治療や野戦病院となる機能を維持しなければならない唯一の医療機関といえる。

 戦時治療の重要性は、現在のウクライナへの一方的な軍事侵攻の報道からも明らかである。3月24日、政府はウクライナ難民支援のために自衛隊の医官をポーランドに派遣する方針を打ち出した。戦場ではマンションや避難所のような民間施設もミサイル攻撃を受け、多くの市民が犠牲になる。あってはならないことだが、有事に自衛隊病院は自らもミサイル攻撃や銃弾のリスクにさらされながら機能する医療機関最後のとりでとなる。

 自衛隊病院の持つ病床数から考えると、有事で戦傷した自衛隊員は収容しきれない。有事で負傷した自衛隊員も自己負担コストを支払い、一般病院で治療するしかない。しかし、自衛隊員を使い捨ての駒のように扱う状況が続けば、途中退職する自衛隊員がさらに増える可能性もある。