コロナ禍だけでなく、円安や資材高の影響も相まって、多くの業界や企業のビジネスは混乱状態にある。その状況下でも、苦境を打破できた企業とそうでない企業との間で勝敗が分かれている。そこで、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大塚ホールディングスやエーザイなどの「製薬」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
塩野義製薬が反転の兆し
エーザイは全9社で唯一の減収
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製薬業界5社。対象期間は22年2~6月の四半期(5社いずれも22年4~6月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・大塚ホールディングス
増収率:13.6%(四半期の売上収益4340億円)
・エーザイ
増収率:マイナス7.4%(四半期の売上収益1843億円)
・協和キリン
増収率:16.2%(四半期の売上収益975億円)
・塩野義製薬
増収率:4.2%(四半期の売上収益718億円)
・小野薬品工業
増収率:22.2%(四半期の売上収益1067億円)
製薬5社では、エーザイを除く4社が前年同期比で増収。このうち大塚ホールディングス、協和キリン、小野薬品工業は2桁増収と好調だ。
また、増収幅こそ小さいものの、塩野義製薬は直前の四半期(22年1~3月期)に続いて増収を達成した。
塩野義製薬は20年4~6月期(21年3月期第1四半期)から21年10~12月期(22年3月期第3四半期)にかけて、実に7四半期連続で減収と低調に推移していた。ただ、ここにきて反転の兆しも見え始めている。
一方のエーザイは、9月28日に公開した記事『中外製薬は増収率が急失速、アステラスは2桁増収でV字回復…異変の要因は?』で扱った中外製薬、武田薬品工業、第一三共、アステラス製薬も含め、本連載で分析対象とした製薬業界の計9社のうち、22年4~6月期は唯一の減収となった。
塩野義製薬に復調の兆しが見えつつある要因は、そしてそれでも油断大敵な理由とは何か。さらに、エーザイが製薬業界9社の中で「独り負け」となった事情とは――。
次ページ以降では、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、これら2点について詳しく解説する。