中外製薬は増収率が急失速、アステラスは2桁増収でV字回復…異変の要因は?Photo:PIXTA

コロナ禍だけでなく、円安や資材高の影響も相まって、多くの業界や企業のビジネスは混乱状態にある。その状況下でも、苦境を打破できた企業とそうでない企業との間で勝敗が分かれている。そこで、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は中外製薬や武田薬品工業などの「製薬」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

好調だった中外製薬が急失速
不振だったアステラス製薬がV字回復

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製薬業界4社。対象期間は22年2~6月の四半期(4社いずれも22年4~6月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・中外製薬
 増収率:6.4%(四半期の売上収益2356億円)
・武田薬品工業
 増収率:2.4%(四半期の売上収益9725億円)
・第一三共
 増収率:6.2%(四半期の売上収益2803億円)
・アステラス製薬
 増収率:17.1%(四半期の売上収益3818億円)

 製薬4社は、いずれも前年同期比で増収となった。

 ただし、このうち2社(中外製薬・アステラス製薬)の過去の決算をひもとくと、両者の四半期増収率にある“異変”が生じていることが分かる。

 中外製薬は19年10~12月期から22年1~3月期までの10四半期のうち、実に8度の2桁増収を記録。直前の四半期(22年1~3月期)には3桁(前年同期比113.6%増)という驚異的な増収率をたたき出した。つまり、売上収益が2.1倍超になったということだ。

 だが22年4~6月期は1桁台の増収と、これまでと比べると低調な水準で着地している。

 一方のアステラス製薬は、過去の10四半期のうち6期が減収で、残る4期の増収率も3~6%程度で推移していた。直前の四半期(22年1~3月期)の増収率もマイナス1.5%と苦戦していた。

 それが一転、22年4~6月期は2桁増収を果たし、V字回復を成し遂げたのだ。

 長きにわたって好調だった中外製薬が失速し、低調だったアステラス製薬が高い増収率を記録するという“異変”の要因は何なのか。

 次ページでは、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、詳しく解説する。