英国トラス新首相が直面する「深刻なインフレ」の実態、長期化不可避の理由英国のリズ・トラス新首相 Photo:Dan Kitwood/gettyimages

「嵐の中の船出」となった
トラス新首相

 英国では、7月にジョンソン前首相が保守党の党首辞任を突如表明した。コロナ禍の首相官邸でのパーティー報道がなされた昨年末以降、保守党の支持率は低迷していたが、党人事の任命責任を問う形で閣僚が相次いで辞任したことで、追い込まれる形での幕切れとなった。

 今回、ジョンソン氏の退陣に伴って行われた保守党党首選では、党内右派に位置付けられるリズ・トラス氏が勝利、9月6日に新首相として就任した。英国史上では故サッチャー元首相、メイ元首相に続く3人目の女性首相となる。

 党首選では大規模減税・規制緩和の公約を掲げ、決選投票では当面のインフレ対策の優先および財政健全化の方針を訴えたリシ・スナク元財務相と争った。事前の世論調査では、前政権で先陣を切って辞意を表明したスナク氏について「ジョンソン氏を辞任に追い込んだ中心人物」として不信感を持つ党員も多いとみられた中、トラス氏が一貫して安定したリードを保っていた。

 しかし、ふたを開けてみれば、決選投票の得票率はトラス氏の57.4%(8万1326票)に対しスナク氏は42.6%(6万399票)と、スナク氏が想定外に健闘する結果となった。また、歴代首相(※1)と比較しても、トラス氏の得票率は低調なものにとどまった。

(※1)例えば、2019年にジョンソン氏は66.4%、2005年にキャメロン氏は67.6%を獲得。