英国は新興国にあらず、割安な投資先かは疑問Photo:John Keeble/gettyimages

――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 英国は新興国ではないが、だからといって妙味の大きい投資先というわけでもない。

 窮地に立たされているリズ・トラス英首相は保守党の年次党大会で行った演説で、自身が掲げる減税措置は、先週まで英国を見舞っていた金融市場の混乱のコストを相殺して余りある経済効果をもたらすと主張した。英国の通貨と債券が同時に売り込まれたことで、英経済が新興国のような振る舞いをみせている危険な兆候だとの指摘がアナリストからは相次いでいた。つまり、通貨急落を受けて中銀が金融引き締めを余儀なくされ、政府をデフォルト(債務不履行)へと追い込む構図だ。

 通貨ポンドはその後、完全に下げから回復し、超長期債の利回りは元の水準にほぼ戻った。市場が圧力をかけたため、トラス氏は所得税の最高税率引き下げ撤回に追い込まれたと見る向きもある。しかし実のところ、市場の反応は年金基金のレバレッジによって増幅された面が大きく、トラス政権が党内の突き上げに遭い、屈辱的な撤回を迫られる前から反転していた。