ただ話すだけなのに「頑張る」「疲れる」「気を使う」……。日々のコミュニケーションで苦戦苦闘している日々よ、さようなら。これからは、説得しようと力業で勝負する必要はありません。自ら動くのではなく、相手に動いてもらい、自分の思い通りの結果に導けばいいのです。
それを可能にしたのが、大久保雅士著『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』だ。「トップセールス」の実績を持つ「メンタリズム日本一」が生んだ至極のコミュニケーションスキルが詰まった一冊。本書より、徹底的に磨かれたノウハウを一部抜粋し、「口下手で人付き合いが苦手」な人でも今日からすぐできる方法を紹介する。
悩みや不安を引き出すことで、相手との信頼を築く
「なやみはつきねんだなあ 生きてるんだもの」
『なやみはつきねんだなあ 相田みつをいのちのことば』(小学館)に載っていた言葉です。
人間は一つの目標が達成されたり欲望が満たされたりすると、次の欲求が出てくるので、絶えず欲求不満の状態にある。だから悩みが尽きなくても当たり前なのだということです。
私も前向き後ろ向き問わず、悩みを抱えることが多いので、何度もこの言葉に助けられてきました。
悩みや不安は、誰にでも常にあるものです。悩みや不安を引き出すことも、相手との信頼を築くうえで効果的です。前述のコールドリーディングには相手の悩みや不満を引き出す「心配質問」があり、相手の信頼を得るには効果的な手法です。
人の悩みは大別すると、「恋愛」「お金」「仕事」「健康」「人間関係」のどれかに当てはまるといわれています。
世代別では、20代以下は恋愛、30代は仕事、40代はお金、50代以上は健康の悩みが多く、人間関係に関して言えば、どの年代にも共通してある悩みと言えます。
ですから、「もしかして、人間関係で悩みがあるのではないですか?」と聞くと、たいてい当たりますし、仮に外れていても、その人が抱えている悩みの話に移りやすく、相手の悩みを引き出すことができるのです。
しかし、占い師でもない限り、「あなたは今、〇〇で悩んでいますね?」と声をかけるのは、いささか不自然ですよね。「なぜ、そんなことを聞くのですか?」と突っ込まれてしまう危険性もあります。この会話術を日常で使うにはもうひと工夫が必要です。そこで、「心配な気持ち」を付け加えて質問してみましょう。
「顔色が悪いですけど、何かあったのですか?」
「先月話したときと雰囲気が違いますが、どうかしましたか?」
「いつもより疲れていそうですが、何かつらいことでもありましたか?」
「あなたを心配している」という気持ちを添えた「心配質問」をすると、「私の違和感に気づき、心配してくれたのか」と素直に受け取ってくれます。理由は当てずっぽうでも効果はありますが、相手の表情や仕草を見て気になったことを表現すれば、よりリアルになります。
さらに、近年ではSNSなどに悩みや不満を投稿している人が多くいます。ここから情報を引き出すこともできるので、そこから「何かあったんですか?」と「心配質問」をすることも有効です。
要は、相手が悩みや不満を話し出すきっかけをつくってあげればいいのです。元CIA諜報員のJ・C・カールソンは、著書『CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる』(東洋経済新報社)で、過去に初対面の相手の情報を得るために、この技術を使ってきたことを語っています。「心配質問」はスパイが使うほど効果のあるテクニックなのです。
悩みや不安を引き出して終わりではありません。大切なのは、悩みや不安を引き出したら、そのままにしないことです。あなたが解決できない悩みだった場合は、「相手がどうしたいか」をしっかり聞き、その判断を応援する言葉をかけることが懸命です。悩みを共有するだけで、相手はあなたに好意を寄せるのです。
(本原稿は、書籍『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』から一部抜粋、編集したものです)