ただ話すだけなのに「頑張る」「疲れる」「気を使う」……。日々のコミュニケーションで苦戦苦闘している日々よ、さようなら。これからは、説得しようと力業で勝負する必要はありません。自ら動くのではなく、相手に動いてもらい、自分の思い通りの結果に導けばいいのです。
それを可能にしたのが、大久保雅士著『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』だ。「トップセールス」の実績を持つ「メンタリズム日本一」が生んだ至極のコミュニケーションスキルが詰まった一冊。本書より、徹底的に磨かれたノウハウを一部抜粋し、「口下手で人付き合いが苦手」な人でも今日からすぐできる方法を紹介する。
「正直」を向けると、相手が向き合う
アニメや漫画の戦闘シーンでは、キャラクターの“心の声”が独白的に表現されることがお決まりですが、漫画「ワンピース」の主人公モンキー・D・ルフィにはほとんどないことを知っていましたか? 原作者の尾田栄一郎氏曰く、読者に対して常にストレートな男であるために、「考えるくらいなら口に出す」、または、「行動に移す」ことを徹底しているからだそうです。ルフィは常に本音で語る男なんですね。
現実世界でも、「相手の本音がわかればいいのに」と思ったことはありませんでしょうか。私たちは良好な人間関係を築くために「建前」を使い、本心を伝えないことがあります。それでも、相手の「本音」が読み取れないと相手のニーズに合わせた対応ができず、コミュニケーションが行き詰まってしまいます。
たとえば、職場の会話でこのように聞いたとしましょう。
「仕事に不満があるように見えます。どうですか?」
「何か困ったことがあるんじゃない。どう?」
「余裕があればもう一つ仕事を任せたいのだが、大丈夫か?」
このような聞き方では、遠慮や見栄から本音が言いづらいのです。本当は言いたいことがあっても「大丈夫です」と返してしまうことが多くあります。結果的に、両者の思いに食い違いが生じてしまい、お互いに損をしてしまいます。
相手の本音を引き出すためには、こちらも本音で話していることを示すことです。本音で話してくれた相手には自分も本音で返したい、または本音で返していいのだという心理が働くのです。これを「自己開示の返報性」と言います。
こちらの本音を示すには、「正直どうですか?」を会話に入れるのです。
「仕事に不満があるように見えます。正直どうですか?」
「何か困ったことがあるんじゃない。正直どう?」
「余裕があればもう一つ仕事を任せたいのだが、正直どうだ?」
相手との距離感によっては、「実際のところ」でも「ぶっちゃけ」と言い換えても問題ありません。この言葉が会話に入ると、相手が本音を言いやすくなります。
「正直どうですか?」と聞かれてまで建前を言うのは、「言動の不一致」になるので単純に気持ちが悪いのです。相手が本音を求めているので、嘘を言いづらくなるからです。これを「認知的不協和」と言います。認知的不協和は、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱されたものであり、自分の中に矛盾する2つの認知が生じたときに芽生える不快感を表す用語です。
「正直に話しても大丈夫」なのに、「建前を言う」は矛盾してしまいますよね。ですから、認知的不協和から生じる不快感によって、本音が言いやすくなるのです。不思議なもので「正直」を向けると、相手が真摯に向き合ってくれるのです。
また、商談の場面でも有効に活用できます。
私は生命保険の営業を長くやってきましたが、お客様の断り文句の大半は本音ではありません。見栄やプライドがあり、本音を言っていただけないのです。そこで建前の断り文句に対応をしても、うまく事が運びません。
たとえば、予算の都合が合わず購入を見送りたくても「家族に相談してみないと」と言うこともあるでしょう。そこで、「ではご家族にお会いできませんか?」と聞いてしまうと、相手もさらにごまかさなくてはならなくなります。こうなると、もう本音は聞けなくなります。
ゆえに、商品の提案後には、「お客様、今回のご提案は、正直どうでしたか?」と聞き、断るにしても、本音の理由が聞けるのです。それだけでも、今後のフォローの仕方が変わりますよね。
この「正直どうですか?」をクロージング時に徹底させた生命保険代理店は成約率が飛躍的に上がりました。お客様の本音の声を聞けるようになり、不要な駆け引きがなくなったからです。
本音を言い合うことがすべての場面で必要ではありませんが、相手の本当の気持ちを読み間違えないことで、良好なコミュニケーションを取ることができるのです。
(本原稿は、日々のコミュニケーションがラクになる36のノウハウが詰まった書籍『メンタリズム日本一が教える「8秒」で人の心をつかむ技術』から一部抜粋、編集したものです)