爆発寸前にある
地方政府の隠れ債務

 中国には隠れ債務の問題もある。各地方政府は傘下に、デベロッパーと資金調達の機能を持つ投資会社の「地方融資平台」を持っている。これは、地方政府が中央政府からの規制を逃れて、インフラや住宅投資などによって歳入を増やす起点となってきた。

 採算の合う案件が豊富にある時期はそれが機能して財政が大きく増やせたのだが、上述したように、2005年以降、採算の合う案件はごく限られたものになっていた。地方政府はそれでも地域経済の活性化のために投資を膨らませて、車が通らない道路、乗客の少ない鉄道、イベントが開催されないコンベンションセンターなど、無駄の多いインフラを造り続けたのである。

 ゴールドマン・サックスによる分析では、全国の地方融資平台の総負債額は2020年末時点で約53兆元(約1088兆6000億円)に達しているという。この数字は中国のGDPの半分を超え、公式発表の政府債務より大きい。実際、多くの地方で債券の新規発行が困難になっており、借り換えしかできなくなっているといわれている。

 さらに、金融が発達していない中国では、人民が投資する理財商品の多くが、地方融資平台の発行する社債で運用されている。これはいわば、銀行や証券会社を介さないで、個人が民間を介してデベロッパーにお金を貸し付けて利益を得るシステムである。

 地方で採算性のある案件があるうちはそれでよかったが、今や地方政府は地方債の借り換えのために投資を続ける自転車操業のような状態に陥っているのだから、借金を重ねて社債を償還しているところが多いのではないだろうか。

 人民側は地方政府が関わっているものだからデフォルトなどするわけがないと考えているようなのだが、もし地方融資平台でデフォルトが起きれば、個人の理財商品に大きな損失が生じる。それが全国に広がれば、大きな社会混乱を招くのは避けようがない。