イングランド銀行(英中銀)は政府とのチキンレースで勝ち星を挙げた。投資家の間には安堵(あんど)が広がったが、実は誰にも喜ぶべき材料はあまりなさそうだ。ジェレミー・ハント新財務相は17日、前任のクワジ・クワーテング氏が約束した320億ポンド(約5兆4000億円)規模の減税案の大半を撤回した。この発表を好感し、英国債価格は上昇(利回りは低下)した。とりわけ償還期間の短い銘柄の上げが目立った。英中銀のアンドリュー・ベイリー総裁のいちかばちかの賭けが実った格好だ。同総裁は先週、国債買い上げ措置を延長しない方針をあらためて確認し、年金基金業界をリスクにさらしていた。国債相場は政府の資金調達コストを決めるが、金融安定の鍵も握る。そのため減税案が引き起こした相場急落をイングランド銀も財務省もそのままにはできなかったが、身内・保守党の反発によって金融情勢が不安定になり、「先にまばたきした」のは政府の方だ。