エネルギー動乱Photo by Masataka Tsuchimoto

中部電力が浜岡原子力発電所のデータを不正操作していたという不祥事は、原発事業者に大きな衝撃を与えた。浜岡原発の審査は白紙となり、政府が掲げる電源構成比の目標達成も困難となった。今回の不祥事で想起させられたのが、「原子力ムラ」と呼ばれた原子力部門での過去の不祥事だ。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、中部電力の不祥事が業界に与えた影響と再発防止策を解説する。(国際大学学長 橘川武郎)

規制委「だます」不正
再稼働審査は白紙へ

 2026年1月、中部電力が浜岡原子力発電所(原発)の「基準地震動」算定に関するデータを不正に操作していたことが発覚した。きっかけとなったのは25年2月の内部告発であり、「公益通報制度」によって関連情報が提供されたものである。

 中部電力の発表によれば、原発の耐震設計の前提となる地震の揺れの大きさを示す「基準地震動」を決める過程で、同社の担当者が、都合の良いデータを意図的に原子力規制委員会(規制委)に提示していたという。そのデータを踏まえて、規制委は23年に「基準地震動」を承認し、それを受けて中部電力は浜岡原発3・4号機の再稼働の準備を進めていた。

 いわば、専門的知見を有する規制委を「だます」ほどの巧妙かつ悪質な不正であったわけであり、事件発覚後、規制委の山中伸介委員長が「安全確保という最大の責任を中部電力自ら放棄した、前代未聞の事案」と厳しく指弾したのもうなずける。規制委は事件が発覚した直後、中部電力の浜岡原発3・4号機の再稼働に関わる審査を中止し、白紙に戻した。本稿では、この問題をさらに掘り下げていく。