精神の安定にいい食物は?野菜、ではなく果物ですPhoto:PIXTA

 何かと不穏な空気がまん延している昨今、メンタルヘルスを守るには何がいいだろう。

 英アストン大学の研究グループは、英国在住の健康な成人428人(平均年齢39.7歳、女性53%。およそ9割が白色人種)を対象に、日々の食習慣とメンタルヘルスとの関係を調査している。

 調査対象の食品は(1)果物(生または缶詰)、(2)ジャガイモを除く野菜(生、冷凍、缶詰など)、(3)甘いお菓子(ケーキ、チョコレートなど)、(4)スナック(ポテトチップスなど)の四つ。参加者には間食の頻度と1日の果物・野菜の総摂取量を回答してもらった。

 メンタルヘルスについては、過去1~2週間に感じた抑うつ症状や不安、睡眠障害の有無のほか、生活満足度や幸福感と、過去半年間の認知機能を評価している。

 心身の健康に影響する喫煙歴や運動習慣、体格指数、飲酒歴などの条件を調整して解析した結果、食べる量に関係なく、果物を食べる頻度が高いほど、うつ病リスクが低くなり、メンタルヘルスが改善されることがわかった。

 一方、高カロリーだが栄養価が低いスナック菓子を頻繁に口にする人は、日常的な物忘れ――たとえば人の名前がとっさに出てこない、物を置いた場所を忘れるなど、認知機能に問題が生じていた。

 さらに、そうした失敗を恐れるストレスで不安感や抑うつ症状が増え、精神的な健康を損なう可能性が示唆されている。

 一方、予想に反して野菜や甘いお菓子の摂取量とメンタルヘルスとの関連は見いだされなかった。

 研究者は「果物には抗酸化物質や食物繊維、ミネラルが豊富に含まれている。野菜とは違って生で食べられる点がより有用なのだろう」と推測している。

 スナックなど「超加工品」のリスクについては、米国の1万人以上を対象とした調査でも、消費量と軽度のうつ病や抑うつ気分との関連が指摘されている。抑うつ状態も避けたいが、さらに認知機能の低下リスクがあるなら間食の内容を考え直したい。

 ちょうど果物が美味しい季節でもある。今日のおやつは、出始めたりんごや早生みかんをどうぞ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)