私は戸別訪問を再開した初日、再びトランプの赤い帽子を被り、選挙用アプリが入ったスマートフォンを片手に歩き始めた。1人で歩き回っていたボランティア活動に、助っ人が現れたのは6月下旬のこと。一緒に戸別訪問をやろう、と言ってくれたのは、中国系アメリカ人のグレース・ノリス(55)だった。共和党を支持するアジア人は珍しいな、と思いながら、彼女の話に耳を傾けていた。
※本稿は、横田増生『「トランプ信者」潜入一年』(小学館)の一部を抜粋・再編集したものです。敬称略、年齢や肩書は、取材当時のまま。参考文献については、書籍の最後に一覧で表記してあります。
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共和党の選挙ボランティアに潜入
ミシガン共和党での戸別訪問が再開されるのは6月中旬のことだった。私は戸別訪問を再開した初日、再びトランプの赤い帽子を被り、選挙用アプリが入ったスマートフォンを片手に歩き始めた。
国家非常事態宣言が出てから3カ月近くたつと、戸別訪問で聞く有権者の声に変化が表れ始めた。一定数の熱狂的なトランプ支持者は依然として残っている。しかし、共和党支持者だがトランプには投票しない、という声が目立つようになってきた。
1人で歩き回っていたボランティア活動に、助っ人が現れたのは6月下旬のこと。一緒に戸別訪問をやろう、と言ってくれたのは、中国系アメリカ人のグレース・ノリス(55)だった。ボランティアを取りまとめているコビー・トンプソンに私のことを聞いて連絡をくれた。
うちの近くのショッピングモールの駐車場で落ち合ってから、戸別訪問の場所まで移動した。
私と同じような年格好の女性で、オレンジ色の帽子を被り、白地に赤で「トランプのためのアジア系アメリカ人」と書かれたTシャツを着ていた。初めて見るTシャツだったので、どうして手に入れたのか、と訊けば、前回16年の選挙の際に作ったのだ、と言う。これまでに約70人をボランティア活動に勧誘し、選挙運動のため、朝から晩まで州内を飛び回っている。
共和党を支持するアジア人は珍しいな、と思いながら、彼女の話に耳を傾けていた。