議事堂2021年1月6日午後3時46分、米ワシントンDCの連邦議会議事堂 Photo by Masuo Yokota

ユニクロ、アマゾンの潜入ジャーナリストが単身渡米。トランプ陣営の選挙スタッフとなり戸別訪問1000軒超。アメリカの「分断」「狂信」「暴動」を全て内側から見た。一見すると堅牢にも見える民主主義は、私たちが信じているほど盤石ではなく、意外な脆弱性をはらんでいる。アメリカで起こった“トランプ現象”を追いかけながら、民主主義が、どのように道を踏み外し、どのように機能不全に陥り、崩壊の危機に直面するのかを考えていこう。
※本稿は、横田増生『「トランプ信者」潜入一年』(小学館)の一部を抜粋・再編集したものです。敬称略、年齢や肩書は、取材当時のまま。参考文献については、書籍の最後に一覧表記してあります。

私の目の前で民主主義が死んだ

 2021年1月6日。場所は、ワシントンDCの連邦議会議事堂。天気は曇り空。気温は5℃。

 海に近い街に特有な重たい雲が空を覆いつくす。曇り空ながら、この日、雨は一滴も落ちてこなかった。

 1年にわたり中西部のミシガン州に居を構えて大統領選挙を取材していた私には、湿気を含んだ東京のような冬空が懐かしく感じられた。

 連邦議事堂前には、1月20日に行われる新大統領就任式のため、高さ5メートルほどの鉄筋で組まれた足場に加え、左右に即席の観覧席が設けられていた。それを埋め尽くしていたのは、目測で1000人を超す〝トランプ信者〟だった。身動きも取れないほどぎっちりと詰まっていた。

 この日は午後1時から、連邦議事堂で、上院下院の合同会議が開かれ、大統領選挙の各州選挙人団の票を集計して、次期大統領にジョー・バイデンの就任を認定するはずだった。〝トランプ信者〟たちは、その会議の議事進行を阻止するために集まっていた。