変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋してお届けしている本連載の特別編。「結果が出せない平成上司」と「結果を出し続ける令和上司」の決定的な違いとは?をお届けする。
制度が増えると組織は老化する
皆さんの組織には、どのような制度があるでしょうか。評価制度や研修制度、留学制度など、多くの制度があるのではないでしょうか。
また、明文化はされていないけれど、慣習として社会や組織に定着している仕事の進め方なども、すべて制度に分類することができます。
経済学の世界的な権威であり、比較制度分析の研究で知られる故・青木昌彦氏は、終身雇用制度も、もともとは法律で定められたものではなく、社会の慣習を法律が追認する形で制度化していったと説明しています。
高度成長期において、会社の規模拡大に伴って大量に策定・蓄積されてきた制度ではありますが、実は、意図して定めたかどうかにかかわらず、制度ができることでチームの創造的な活動は阻害されることになります。大企業に買収されたスタートアップが機能マヒに陥り、大企業のような緩慢な意思決定スピードに陥ることもあります。
制度は、構造的に増え続ける
意図的に作られたかどうかにかかわらず、一度作った制度は余程のことがない限りなくなりません。なぜならば、既存の制度から便益を受けている人がいるからです。そこに既得権益がある限り、既存の制度の撤廃には抵抗する人が現れます。
例えば、定年制度が作られた後に、雇用期間を延長するための再雇用制度が作られます。
一方で、リストラを円滑に進めるための早期退職制度が作られたりします。このように制度が次から次へと作られていくと、組織の行動が規定され、組織の老化がどんどん進んでいきます。
制度ではなく、原則でマネジメントする
ゴールが決まっていて、均質的な組織の方が高いパフォーマンスを発揮していた平成上司の時代には、制度を設けて組織行動を規定することには一定の合理性がありました。
一方で、変化が激しく、組織の多様化が求められている令和上司の時代にはそのような制度が制約となってしまいます。
このような時代には、制度ではなく、原則でマネジメントしましょう(下表参照)。
原則でマネジメントすることで、組織を構成するメンバー一人ひとりが自ら考えて実行することができるようになります。原則によるマネジメントは、令和上司の必須スキルと言えるでしょう。
『アジャイル仕事術』では、原則によるマネジメントの具体的な方法以外にも、働き方のバージョンアップをするための技術をたくさん紹介しています。
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。