中国AMEC創業者、米中半導体戦争で板挟みPhoto:Future Publishing/gettyimages

 半導体業界に精通したジェラルド・イン氏は米国を去り、半導体製造装置の世界的メーカーを構築しようと中国で18年を費やした。ところが米国の規制で業界の世界的な融合が危うくなり、イン氏のライフワークは先が見えなくなった。

 米国人のイン氏が創業した中微半導体設備(AMEC)は半導体業界向けにエッチング装置などを製造する企業で、本社は上海にある。同社は大きく発展し、米国や日本の企業が占める業界トップの地位を狙っていた矢先に、米政府が規制を設けた。ロバート・ボッシュや米半導体メーカーのグローバルファウンドリーズなどの顧客を既に獲得しており、同社の装置は欧州やアジアの数十の製造ラインで使用されている。

 だが10月、米国政府が輸出規制を導入した。今回の措置は中国のテクノロジー業界に対するこれまでで最も包括的な規制で、これにより、最先端半導体を開発する中国の業界は米国の技術や人材を活用することができなくなった。

 バイデン政権は新規制について、米国製の半導体が中国軍の能力向上に使われないようにするためだと説明した。規制が包括的であるため、世界的なサプライチェーン(供給網)の二分化が進んだり、中国の半導体産業全般が行き詰まり、米国やアジアの先行企業に追いつくための取り組みが数年後退したりする可能性がある。

 米国の規制はさまざまな点でAMECを脅かしている。同社の最新の年次報告書によると、経営幹部と上級エンジニア約20人のうち、ヤン氏ら7人は米国人だ。

 米国などの部品や素材が使えなくなれば、生産に支障が出る恐れもある。さらに、非中国系の顧客は、半導体分野での中国政府の野望の旗手として引き合いに出される企業が製造する装置を敬遠するかもしれない。

 イン氏は最近の決算発表の電話会見で、AMECが主要製品で使用している部品や素材の約6割は中国製だと述べた。これは4割近くを輸入に頼っているということを意味する。同社の2021年の年次報告書によれば、一部の素材は米国から調達しているが、全体に占める割合は小さいという。

 AMECとイン氏に対する記者の質問への回答はなかった。同社は先月25日、中国のソーシャルメディアで、通常通り稼働していると述べた。