「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】若くても命を落とすことがある…お風呂で事故に遭わない“3つの教え”イラスト:chichols

せっかくの入浴が
健康を害するリスクに

お風呂に入るときに注意したいのは、「ヒートショック」です。ヒートショックとは、急激な温度差により血圧が大きく変動したショックで健康被害を受けること。寒い季節には、暖房が効いている部屋と、暖房のない脱衣所・浴室やトイレとの温度差は10度を超えることも珍しくなく、ヒートショックが起こりやすくなります。

入浴時、暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室に入ると、それだけで交感神経が興奮して血管が収縮し、血圧が一気に上がります。続いて、浴槽入浴でお湯につかって身体が温まると、副交感神経が優位になって血管が開き、血圧がぐんと下がります。

脱衣所・浴室が寒いほど湯温を高めにしやすく、温度差が広がってヒートショックのリスクが高まるのです。浴槽を出て寒い洗い場で身体を洗っていると血圧は上がり、暖を求めてまた浴槽に入ると血圧が下がる……。こんなふうに、入浴のたびに血圧が乱高下していると、血管にはダメージが蓄積します。

入浴で大病を患ったり
溺れ死んでしまうリスク

浴槽から出るとき、急に立ち上がると血圧が急激に下がり、立ちくらみを起こして転倒する恐れもあります。とくに高齢者では、ヒートショックで気を失ったり、血管が詰まって心臓病や脳卒中で倒れたりするケースが少なくありません。

ヒートショックなどによる、高齢者の浴槽での死亡者数は年間4724人(出典:厚生労働省「人口動態統計」[2020年])。これは交通事故死をはるかに上回っています

さらに危険なのは、お酒を飲んで入浴すること。飲酒後は脱水しやすく、血圧が下がりすぎて意識を失い、酔いも手伝って溺れ死んでしまうリスクが高まるのです。「飲んだら入るな、入るなら飲むな」です。

入浴で事故リスクを
下げるための3ヵ条

ひと昔前まで、テレビのバラエティ番組などで温泉を紹介する場面では、露天風呂の湯船に徳利(とっくり)と盃(さかずき)をのせた桶(おけ)を浮かべて、日本酒を楽しむ演出がされることもありました。

あれはあれでオツなものですが、お酒を飲んで入浴することが危険という認識が広がり、そうした演出をテレビで見かけることはなくなっています。

ヒートショックを避けるため、自宅の脱衣所・浴室を暖房器具で十分暖めたり、浴槽の蓋(ふた)をとって蒸気で浴室を暖めたりしましょう。そして、「湯温を41度以下にして10分をこえる長湯をしない」「食後すぐや飲酒後の入浴を避ける」「入浴時には家人に声をかけて知らせておく」といった対策をとるようにしてください。

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)