今、日本では空前のサウナブームが起きています。
芸能人や著名な経営者にも「サウナ好き」を公言する方が増え、また身近なビジネスパーソンで、精力的に仕事をこなすトップエリートと呼ばれる男女がこぞってサウナに通っています。なぜ、仕事ができる人は、サウナにハマるのでしょうか?
サウナを初めて科学的エビデンスに基づいて解説した話題の書「医者が教えるサウナの教科書」(加藤容崇著)より、最新研究に基づいたサウナの脳と体に与える効果と、最高に「ととのう」ための入り方を、本書から抜粋して紹介していきます。
水風呂が「気持ちいい!」と思えるためには?
サウナ室から出たら、汗をシャワーで流して、水風呂に入ります。
なお、熟練サウナーの中には、水風呂に入る前に熱いシャワーで汗を流すことで、水風呂との温度差を楽しむ人もいますが、これはヒートショック(急激な温度変化によって血圧が大きく変動することで、失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こすこと)を起こす恐れがあるため危険です。もちろん、心臓血管系の疾患がない、若くて元気な方であれば問題ありませんが、基本的には「ぬるい水のシャワー」で少し体を慣らしてから水風呂につかるのがよいでしょう。
水風呂は、ふだんサウナを利用している人でも、「心臓がバクバクするから苦手」「とにかく冷たくて無理」ということがあります。しかし、心身のパフォーマンスを上げるために水風呂は必須。ちなみに、水風呂が苦手だからと言って、水シャワーで代替することはあまりおすすめできません。水シャワーは水道水のため、季節や地域によって大きく温度が異なり多くの場合は温度が高すぎます。また水があたった部分しか冷えないので体の反応にムラが生じます。だから、水風呂が苦手でも、このプロセスは外せません。
そこで、水風呂が苦手な人のために、ラクに入るコツを紹介します。
それは、大きく息を吸い、吐きながら入るということです。
なぜ呼吸の仕方が影響するのでしょうか? 身構えて息を止めて入る場合と、吐きながら入る場合の違いを医学的に検証してみましょう。
心臓に負荷をかけないことが、水風呂攻略のカギ
まず、息を止めて入る場合。
息を止めるために、事前に息を大きく吸っていると思います。このとき、横隔膜は下がります。すると、腹部にある多量の血液が、横隔膜が下がることによって、ぐーっと押し出されます。その反動で、血液は心臓に戻り、心拍数が上がります。つまり、心臓にかかる負荷が大きいということです。
それにもかかわらず、相変わらず息を止め、寒さで身を縮めていると、横隔膜は下がった状態を維持するため、ずっと心臓に負荷がかかってしまいます。これが、心臓がバクバクする原因です。
対して、息を吐きながら入る場合。
息を吐くと横隔膜は上がります。すると、横隔膜によって押し出される腹部の血流量が減るため、心臓に戻る血液も減ります。その結果、心臓への負担が減り、バクバク感が抑えられます。こうすることによって、冷たいという感覚も多少はやわらぎます。
また、水風呂に入ってしばらくじっとしていると、実は、冷たさをやわらげてくれる膜のようなものが発生します。サウナーはそれを「羽衣」と呼んでいます。
これは、自分の皮膚表面と水の間に、温かい温度の層が発生する現象のこと。天女の羽衣のごとく皮膚表面をやさしく包み込んでくれるイメージです。
羽衣をまとうと、「冷たくてイヤだ」と思っていた水風呂が、「冷たくて気持ちがいいな」と思えるようになります。羽衣ができるのに大体30秒~1分はかかるので、息をゆっくり吐きながらつかり、しばらく待ってみてください。