行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱のうずに巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はスシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES、くら寿司、カッパ・クリエイトの「すし」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
四半期の売上高は好調だが
不祥事と原材料高のダブルパンチを食らう
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のすし業界3社。対象期間は2022年5~9月の直近四半期(くら寿司は22年5~7月期、その他2社は22年7~9月期)の直近四半期としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・FOOD & LIFE COMPANIES(スシロー)
増収率:11.8%(四半期の売上高694億円)
・くら寿司
増収率:26.1%(四半期の売上高454億円)
・カッパ・クリエイト
増収率:8.8%(四半期の売上高180億円)
※くら寿司は22年10月期第1四半期(21年11月~22年1月期)から収益認識に関する会計方針の変更を行っているが、影響が軽微なことも踏まえ、当社の開示方法に準じて増収率はその前後で連続性を持たせている。
新型コロナウイルス感染拡大の影響が落ち着きはじめ、飲食店に活気が戻る中、再び客足を遠ざけかねない不祥事が相次いでいるのがすし業界だ。
かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトでは、元社長の田邊公己氏が、前勤務先の競合すしチェーン「はま寿司」から営業秘密を不正に持ち出したとして9月30日に逮捕された。
田邊氏が逮捕された日は今回扱う決算期の最終日であるため、四半期業績への影響は軽微とみられるものの、大きなイメージダウンを強いられたのは間違いない。
また、いずれも前四半期に起きた不祥事だが、FOOD & LIFE COMPANIES(スシロー)では22年6月に「おとり広告」の問題が発覚。消費者庁から景品表示法違反を指摘され、再発防止を命じる措置命令を下された。
くら寿司でも22年4月に、山梨県甲府市の店舗で働いていた男性店長が、上司からのパワーハラスメントなどを苦にして店の駐車場で焼身自殺を遂げたと「週刊文春」が報道した(くら寿司側はパワハラと自殺の関連性を否定)。
結果的に、スシローとくら寿司は四半期決算で2桁増収を達成し、かっぱ寿司も増収で着地したが、相次ぐ不祥事報道ですし業界全体の印象が悪化しており、その今後は決して安泰ではない。
3社の中には、不祥事を機に月次実績が落ち込んでいる企業が存在する。また、いずれの企業も、原材料高や物流費、人件費の高騰によって、利益面が打撃を受けている。
中でもFOOD & LIFE COMPANIESは、通期決算における純利益が「前期比約7割減」となるなど大きく落ち込んだ。
不祥事と原材料高の「ダブルパンチ」が襲う3社の現状はどうなっているのか。次ページで、データを交えて詳しく解説する。