かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトの前社長が、企業の営業秘密を侵害したとして逮捕された。上場企業の現職トップが刑事責任を問われる異例の事件となった。この「かっぱ寿司事件」がはらむ露骨すぎるヤバさと、そこから得られる転職・情報持ち出しの現代的教訓を解説したい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
かっぱ寿司事件と
転職時の情報持ち出しについて
「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト(カッパ社)の前社長、田辺公己容疑者が不正競争防止法違反(以下「かっぱ寿司事件」)で逮捕された。この一件は、「転職」に関わる多くの関係者にとって、今後の参考とすべき教訓を含んでいる。転職者当人だけでなく、辞められる側の会社、転職者を受け入れる会社の関係者などにとってもだ。
事件自体は、田辺容疑者がカッパ社に転職する際、ライバル会社であるはま寿司の仕入れに関わるデータなどの重要営業情報を持ち出して、転職先でこれを利用しようとしたというものだとされる。似たような話は他にもたくさんありそうだが、普通の読者は「露骨すぎて、ヤバい」と思ったのではなかろうか。露骨な分、分かりやすい事案だ。
本稿では、かっぱ寿司事件の情報持ち出しの経緯を振り返って、転職の際の情報持ち出しの方法やリスクなどについて検討する。
その後に、例えば読者が転職する場合に、情報の持ち出しについてどう考えるといいのかについて、まとめて解説したい。率直に言って、筆者も過去の転職にあって「情報を持ち出したい」と考えたことは何度もある。