【寄稿】日本が欧州エネ政策の失敗を避けるには=エマニュエル駐日米大使Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

――筆者のラーム・エマニュエル氏は駐日米国大使

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【東京】欧州のロシアへのエネルギー依存は長年くすぶり続けてきた懸案だった。ロシアによるウクライナ侵攻がそれを危機に変えた。欧州諸国がこの不当な戦争に対抗しようとしたとき、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はエネルギー供給を突然削減することで、欧州大陸にいる銃後の市民に別の攻撃を仕掛けた。これにより、欧州経済が重大な混乱に陥る危険が生まれた。

 これらはすべて、世界の秩序を転覆させようと決意した独裁的な指導者に頼ることの危険性をわれわれに示している。エネルギーを巡る闘いが日本で全く同じように起きることはないかもしれないが、日本の政策立案者はエネルギーをめぐる欧州の脆弱(ぜいじゃく)性から学ぶことができる。日本は欧州のような苦境を回避することはできるが、そのためには迅速に行動しなければならない。今月1日に初会合が開かれた「日米エネルギー安全保障対話」は、両国が共有するエネルギー安全保障の目標を強化する絶好の機会となる。

 欧州諸国は今年、ガス供給の多角化、再生可能エネルギーの導入の加速、エネルギー効率の改善によって、ロシア産エネルギーに対する依存度を3分の2削減しようと躍起になっている。これはとてつもなく壮大な事業で、過去何十年でエネルギーインフラが劣化したことで実現がより困難になっている。欧州諸国の取り組みはまさに思い切ったものだ。

 日本には同じような課題が待ち構えている。日本がエネルギー安全保障を実現し、気候変動に関する目標を達成するためには、高度に発展した原子力産業を動かす必要がある。日本はこのための深い技術的ノウハウを持っているにもかかわらず、原発は運転停止状態にあり、そうしたノウハウが薄まっている。一部の原発を再稼働させるとの岸田文雄首相の表明は勇気あるものだった。2011年3月に津波を原因とする放射能漏れの危機があっただけに、原子力を受け入れることが国内政治的に難しいことを彼は誰よりもよく分かっている。政治とは、こうした難しい選択をすることだ。日本の原発再稼働が早ければ早いほど、エネルギー安全保障の実現と気候変動の安定化に近づく。

 既存の原発は再稼働が可能である一方で、日米は原子力の未来にも目を向けている。それは、小型モジュール炉の推進だ。われわれ2カ国はこの最先端技術をリードしており、ルーマニアやガーナなどでの利用を既に協力してサポートしている。