――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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インフレ率はなぜ2%程度でなければならないのか。インフレ率が中央銀行当局者の好む目標値を頑なに下回っていた頃、彼らにつきまとっていた問題だ。今、この問いを改めて考え直しても意味がありそうだ。
この1週間、インフレがようやく低下傾向にあることを示唆するデータが相次いで発表された。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する食品とエネルギーを除く個人消費支出(PCE)価格指数は、前月比の伸びが今年に入ってから2番目に小幅なものとなった。個人消費が急増し、雇用の拡大が続いているにもかかわらずだ。一方、ユーロ圏のインフレ率は11月に10%に低下し、10月の10.6%がピークであったことが示唆された。
ジェローム・パウエルFRB議長が11月30日に今後の利上げ幅を縮小すると発言をしたことを受け、株価は特に上昇傾向にある。ただ、パウエル議長は引き締めの終了はまだかなり先であることも示唆した。実際、突き詰めて言えば、中央銀行当局者はインフレ率の上昇が止まろうが関係ない。彼らは、インフレ率を下げ、彼らの使命として達成しなればならない2%という数字に戻したいのである。
このことは、中央銀行と他の人たちの利害の不一致を浮き彫りにしており、投資家を心配させるものである。
多くの富裕国では、インフレは7月以降減速しているが、エコノミストの予想中央値に基づくと、インフレ率は2025年まで2%に戻ることはないとみられている。デリバティブ市場ではFRBと欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中銀)が2023年に利上げを停止してその年内に利下げに転じ、インフレ率が低下する中でその後2年間は満足するというシナリオを織り込んでいる。