米国・上院民主党のチャック・シューマー院内総務Photo:Kevin Dietsch/gettyimages

 特定の法案を最終的に本来の趣旨と無関係な大盤振る舞いの措置で飾り立てた姿にすることは、米連邦議会ではクリスマスツリーという名で知られている。祝祭気分に浮かれた民主党議員らが、大麻業界支援策から、反トラスト法(独占禁止法)の適用免除措置まで、あらゆる飾りを国防権限法案に付帯させようとするお祭り騒ぎに注目しよう。

 2023会計年度の国防権限法案は、ジョー・バイデン大統領の国防予算要求額に450億ドル(約6兆1600億円)を上乗せする内容であり、その概要は何カ月も前から知られていた。優先項目の1つは、ウクライナへの武器供与を拡大し、それによって減った米国の兵器在庫を補充することだ。もう1つの優先項目は、兵士らの給与の4.6%引き上げである。この引き上げ幅は、インフレ率の半分程度にすぎないが、新兵の確保に苦労している米軍にとっては朗報となる。同法案には「太平洋抑止イニシアチブ(PDI)」などに必要な資金も含まれている。

 欧州での戦争を注視している米国民は、国防の強化が喫緊の課題だと考えているかもしれない。しかし、彼らは上院民主党のチャック・シューマー院内総務(ニューヨーク州選出)の政治的な皮肉を過小評価している。シューマー氏は、単独の法案の形では議会を通過させられなかった、あるいは今年のもっと早い時期に通過を試みることができた考えを、国防権限法案に盛り込もうとしている。