写真:サッカードイツ代表が口を覆う様子サッカーW杯の集合写真で口をふさぐ抗議のジェスチャーを行ったドイツ代表 Photo:Sipa USA/JIJI

サッカーのワールドカップの熱狂とは裏腹に、カタールに対する国際的な批判はやまない。外国人労働者や「LGBTQ+」と呼ばれる性的少数者に対する人権侵害への糾弾だ。ただその裏には、国家レベルの謀略がうごめいていることも見落としてはならない。国際的なカタール批判の裏事情に迫る。(イトモス研究所所長 小倉健一)

カタールW杯の熱狂の裏で
人権問題に対する批判の声

 カタールで開催されているサッカーのワールドカップ(W杯)。日本代表は優勝候補の一つであるドイツ代表に勝利し、サウジアラビアは同じくアルゼンチンに逆転勝利を収めたことから、大きな盛り上がりを見せている。

 しかし、ドイツ代表が日本戦を前に出場メンバーが全員で口をふさぐアピールをするなど、カタールの人権問題について西側諸国からは批判の声が高まっている。いったい何が起きているのか。カタールがどのような国なのかをひもときながら述べたい。

 まず、カタールへ寄せられる批判の中身だ。

 一つは、移民労働者の扱いについてだ。米人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、低所得者層の移民たちへの賃金未払い、制限的な労働慣行、原因不明の死亡に批判の声を上げている。

 カタールの人口300万のうち約9割は外国人労働者であり、そのかなりの部分が東アフリカ、南アジア、東南アジアの貧しい地域からの出稼ぎ労働者だ。

 HRWは2019年1月から20年5月にかけて、60の異なる雇用主や企業で働く93人の移民労働者にヒアリングを実施した。すると、「全員が未払い残業、恣意的な控除、賃金の遅延、賃金の差し控え、未払い賃金、不正確な賃金など、雇用主による何らかの賃金虐待」があったのだという。