JD.com創業者による
「コロナは怖くない」発言
「私個人の経験からすれば、新型コロナウイルスの症状は風邪やインフルエンザよりも軽い。だから皆さん、慌てたり怖がったりする必要はない。愉快な心理状態を保ち、たくさん野菜や果物を食べて、たくさん水を飲むことだ」
12月11日、中国大手ECサイト「京東商城」(JD.com)の創業者・劉強東氏が同社の従業員に向けて発信したビデオメッセージを、上海を拠点にするメディア澎湃(The Paper)がソーシャルメディアで配信した。
劉氏は、政府が12月7日に「新十条」(リスク地域の細分化、PCR検査の規模、頻度の縮小、自宅隔離の推奨、地域をまたぐ移動時の陰性証明、到着時のPCR検査不要化など)と称される新たな新型コロナ抑制のための緩和措置を発表したのを受けてメッセージを発信したのだが、厳しい報道規制・言論統制下にあり、しかも政治的に保守的なスタンスを取ることの多い上海の主流メディアがこれを流した情景を眺めながら、3年以上続いた「ゼロコロナ」策を巡る風向きが一気に変わっていると筆者は判断した。
というのも、劉氏のような、市場や世論に多大な影響力を持つ著名企業家による、新型コロナなんて怖くない、感染したとしても慌てる必要はないといった言論を、政府が利用する形で、世論を誘導しようとしているからだ。習近平総書記自身が感染者数ゼロを徹底実現しようとする「ゼロコロナ」策の正当性を宣伝して回り、集団免疫の効力を否定していた状況下では考えられなかった事態である。