写真はイメージです Photo:PIXTA中国では、建設途中のマンションが隔離施設として使われることもあるという(写真はイメージです) Photo:PIXTA

10月初旬、見ず知らずの在日中国人からメッセージが届いた。母親が危篤という一報を受け、厳しいゼロコロナ政策を実施する中国に一時帰国。しかし、隔離中に集団食中毒となり七転八倒の苦しみを味わったという。さらに実家に戻った翌日に、その地区がロックダウンされるという不運にも見舞われたことが書かれていた。海外に暮らす中国人として、初めて中国の隔離やロックダウンの洗礼を浴び、「報道だけでは真実は分からない、ゼロコロナがいかにひとりひとりの中国人を苦しめる政策であるかを思い知った」と話す。(ジャーナリスト 中島 恵)

ある在日中国人男性が
母の危篤で急遽故郷の街へ帰ることに

 その在日中国人の男性からのメッセージは週末の午後、突然届いた。最初は半信半疑だったが、やりとりしていくうちに真面目で信頼できる人物であると感じ、詳細な情報を提供してもらった。そこには現地でしか撮影できない写真や食中毒で入院した際の本人の証明書などが添付されていたため、直接会って話を聞いた。ご本人の実名など出せない部分が多いが、その男性の体験を紹介したい。

「6月中旬、高齢の母親が危篤という連絡が入りました。母は3月にがんであることが分かり、遠く離れた都市に住む妹が帰省して世話をしていたのですが、6月中旬に危篤になりました。私も急きょ帰るべく飛行機の手配をしましたが、コロナの影響で予約できず、8月のフライトしか予約できませんでした。残念ながら、母は6月下旬に亡くなり、臨終に立ち会うこともできませんでした。本当に無念でやりきれない思いです」

 男性の話では、中国のある大都市への8月のフライトは往復で約40万円。コロナ禍の現在、特別に高額とはいえないが、それよりも何よりも母の最期に間に合わなかったことがつらかったという。一刻も早く故郷で待つ父親や妹の元に帰りたかったが、中国は厳しいゼロコロナ政策を継続しており、家族に会う前の隔離は必須だ。