中外製薬,中外製薬の新研究所めぐり行政訴訟、周辺氾濫で「反SDGs」レッテルのリスクPhoto:123RF

 中外製薬にとって正念場かもしれない。同社が横浜市戸塚区に建設する研究施設「中外ライフサイエンスパーク横浜」をめぐる周辺住民との間の軋轢だ。

 研究拠点建設の問題は医薬経済ONLINE2019年8月15日号で報じたが、同社は戸塚区を流れる柏尾川を挟む日立製作所の工場跡地を買収し、研究拠点を計画。だが、その土地はハザードマップで台風や豪雨の際には浸水想定区域に指定されている低地帯。日立製作所時代は多くの土地が空き地のままで、豪雨の際には遊水池の役割を果たしていたという。そんな土地を購入した中外は西側地区に高さ2メートルの盛土を行い、地上6階、地下1階の研究棟など6棟の建設を進めている。

 それに対し、周辺住民が「豪雨の際には遊水地の役割を果たしてくれていた土地に盛土をしたら、周辺の住宅は軒並み床上浸水してしまう。盛土でなく、ピロティ(柱)建築にしてほしい」と要望。だが、願いは聞き入れられず、横浜市が開発許可を出したことから横浜市に対し、「開発許可撤回」の行政訴訟を提起した。目下、裁判は佳境を迎えているが、その間に建設工事は進み、すでにビルが完成し、内装工事とビル間の盛土が始まっている。周辺住民からは「豪雨で浸水したら中外の社員は白い目で見られるのを覚悟しているのか」という声すらある。