2002年10月に中外製薬は世界有数の製薬企業であるスイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュとの戦略的提携契約に基づき日本ロシュと合併、ロシュは中外製薬の株式の過半数50.1%を取得し、中外製薬はロシュ・グループの一員となった。21年12月末時点のロシュの持ち株比率は61.16%となっている。
提携時の取り決めであったロシュの株式保有の上限を07年9月30日まで50.1%、12年9月30日まで59.9%、その後は双方の協議により見直し、ロシュは中外製薬の上場維持に協力するという当初の合意は順守されている。最近はロシュによる100%子会社化という思惑で株価が動くことはほとんどなくなった。
足元の中外製薬の株価だが、堅調な業績予想にもかかわらず低位に放置されている。いったんは株価4000円割れでPER20倍以下という歴史的割安水準からは抜け出したが、株式市場の下落もあり依然として上値は重いという印象を拭えない。21年の年初までの中外製薬の業績と株価は、飛ぶ鳥を落とす勢いがあった。
株価が下落に転じた要因のひとつとして考えられるのは、21年2月4日に発表した新成長戦略「TOP I 2030」が不評であったことだろう。成長戦略を語るだけの十分なKPI(重要業績評価指標)が示されておらず、30年度までに横たわるリスク要因に対して、投資家は警戒感を高めたはずだ。言うまでもなく株価が冴えないのは、そのほかにもいくつかの要因が重なっているためで、株価は複雑骨折を負った状況と考えられる。