さまざまな「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。そんな中、このコロナ禍に出版した著書『ストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。

生まれ変わったかのように「脳を最高に幸福な状態」にするための習慣・ベスト3Photo: Adobe Stock

「セロトニン」的な幸福を得る習慣

「幸せ」になるためには、「健康」がベースにないといけません。

 身体的・メンタル的に健康で、朝起きたときに気分がいいことを目指しましょう。

 まずは、「朝散歩」が有効です。朝15~30分散歩をするだけで、セロトニン神経が活性化し、セロトニン的幸福を手に入れることができます。

 また、座禅や瞑想などでのマインドフルネス、腹式呼吸でもセロトニンは得られます。

 セロトニンの分泌には「睡眠」は必須で、睡眠不足や夜ふかしは悪影響を及ぼします。また、「笑顔」によっても、セロトニンが分泌します。ドーパミンによって仕事を頑張るのも大切ですが、健康を害するレベルまで根を詰めて働くと、必ず不幸を招きます。

 セロトニン的幸福は、「1日15分の朝散歩」というとても簡単な習慣だけで手に入れることができます。もっともかけがえのない幸福感なのです。

「オキシトシン」的な幸福で心の安定化

 次に目指すべきが、オキシトシン的幸福です。

 配偶者や子ども、恋人、友人などの、安定した人間関係が、あなたを幸せにします。これらは、すでに手に入れていたとしても、その大切さに気づかずに、失ってから初めて気づくことが多いのです。仕事人間で家庭を顧みなかった人が、離婚をつきつけられた瞬間、どれほど家族の存在が大切だったかに気づき、後悔します。

「安定した人間関係」があると、精神的に安定します。仕事などで多少のストレスがあっても、「安定した人間関係」があれば、メンタル的に支えられるのです。

 パートナーとのスキンシップ、会話、コミュニケーションで、オキシトシンは分泌します。

 スキンシップ、特に性行為は最もオキシトシンが分泌されるといいますが、20秒以上のハグでも十分にオキシトシンが分泌します。また、子どもを抱っこすると、抱っこしている親と子どもの双方にオキシトシンが分泌します。

 あるいは、恋人や友人と楽しくおしゃべりしていたり、人に親切にしたり、逆に親切にされたときにも、オキシトシンは出ます。

ボランティア活動をする人は、しない人と比べて5年以上長生きする」という研究結果があります。その理由こそが、オキシトシンと関係しています。オキシトシンの分泌が多い人は、心臓血管系の病気にかかるリスクが低いともいわれています。

 恋人や友達がいない場合は、犬や猫などのペットでもOKです。ペットと戯れていると、飼い主はもちろんのこと、ペットにもオキシトシンが分泌します。犬や猫をなでると「癒やされる」という気持ちは、脳科学的に正しいのです。

 実際に、オキシトシンはストレスを低下させ、細胞の修復などを促進する効果もあります。あなたの心と体を、本当に癒やしているのです。

 夫婦や親子の会話を大切にする。コミュニケーションを増やす。一緒にすごす時間を増やす。親しい友達とリラックスした時間を持つ

 こんな当たり前のことが、幸福においては非常に重要な要素なのです。

「ドーパミン」的な幸福を最後に目指す

 日々の安定した精神状態(セロトニン的幸福)と、安定した人間関係(オキシトシン的幸福)の2つが手に入れば、別にお金持ちにならなくても、社会的に成功しなくても幸せに生きていくことができます。

 この「基本的な幸福感」にきちんと気づき、それを実感できない人は、いくらドーパミン的幸福を手に入れても、それに満足できません。

「もっと、もっと」と上を目指し続け、いつまで経っても不安な状態から逃れられないのです。

 ドーパミン的幸福は仕事で「社会的成功」を手に入れることで得られます

 しかし、それは幸福の一部の話であって、必要十分条件ではありません。

「健康」によるセロトニン的幸福と、「人間関係」によるオキシトシン的幸福。それらを手に入れた上に、社会的成功、ビジネスの成功などの、「目標達成」が乗っかり、「最高に幸福な状態」になれるのです。

 セロトニン的幸福、オキシトシン的幸福という「幸福の土台」をおろそかにして、ドーパミン的幸福を目指すと、やがてすべてが崩壊します。日々の生活の中でも、ドーパミン的幸福に偏らず、すでに手に入れているセロトニン的幸福とオキシトシン的幸福に気づき、噛みしめることができれば、実はあなたは、今日からでも「幸福」になることができるのです。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に27万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ90万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。