「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

【あなたは大丈夫?】「部下を育てたことがない人」が最初に失敗しがちな“1つのこと”。その正体Photo: Adobe Stock

上司がやりがちな“失敗”の正体

新しく部下を持ったとき、多くの上司が最初にやってしまう“ある失敗”があります。
それは、「いきなり部下の本音を引き出そうとしてしまう」ことです。

たとえば、次のような質問はダメな質問と言えます。

・「何か悩みはある?」

一見すると、コミュニケーションを取ろうとしているように見えますが、これが意外にも信頼関係づくりの大きな壁になるのです。今回は、その理由と改善策についてお話しします。

部下は「上司には言えないこと」がある

たとえば、あなたがまだ同僚だったとき、「何か悩みはある?」と聞けば、相手は素直に話してくれたかもしれません。しかし、立場が上司と部下に変わった途端、状況は一変します。

部下の立場からすると、上司に悩みを打ち明けることは「評価や将来の仕事に影響するかもしれない」というリスクを伴います。
そのため、「特にありません」「まあまあです」といった無難な答えを選び、本音を隠してしまうのです。

存在する「情報」や「立場」の差

ここで押さえておきたいのは、「上司と部下では、持っている情報量も立場も違う」という事実です。
上司の目線ではフラットな会話のつもりでも、部下にとっては“評価する人”との会話になります。信頼関係がまだ浅い段階では、この見えないプレッシャーが会話を不自然にしてしまうのです。

だからこそ、最初から「本音を話させよう」とするのではなく、まずは安全な話題から事実を共有し合うことが大切です。

事実質問で距離を縮める

本音を引き出す前に有効なのが、「事実質問」です。
事実質問とは、「答えが1つに絞られる質問」のこと。たとえば、こんなふうに聞いてみます。

・「今朝のクレーム対応、最初に電話を取ったのは誰だった?」(Who)
・「昨日の展示会は、どこでやったんだっけ?
」(Where)
・「先週のプレゼンで、質疑はいくつ出た?」(How many)

こうした事実ベース、それも「答えやすい事実」に関するやりとりを重ねることで、部下は「この上司には安心して話せる」という感覚を持ちやすくなります。その積み重ねが、やがて本音を話せる関係へとつながるのです。

よい人間関係の基本には、よいコミュニケーションがあり、よいコミュニケーションの出発点には、良い質問があります。

本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろしです)