コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。
そんな中、このコロナ禍に22万部を突破したベストセラー『ストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。
誰でも仮面を使い分けている
「誰にでも本音を話すべきではない」とアドバイスすると、「本音と建前を使い分けるような生き方は嫌だ」と反論が返ってきます。
誰にでも本音を話さないということは、別に「嘘をつくこと」でも「偽りの中で生きていくこと」でもありません。
心理学で「ペルソナ」という考え方があります。「ペルソナ」とは、「仮面」という意味で、私たちは、いくつもの「ペルソナ」を使い分けて生活しているのです。
たとえば、「会社」では、「会社員」の仮面をかぶり、「家」では仮面を取り「素の自分」でいられるかもしれません。さらに、上司と接するときは「部下」の仮面を、部下と接するときは「上司」の仮面をつけるでしょう。家にいても、子どもと遊ぶときは「親」の仮面をつけて振る舞い、夫婦の間では「夫・妻」の仮面をつけるのです。
実際に、上司、部下、家族と接するときは、「言葉遣い」や「表情・態度」が変わるはずです。誰でも「ペルソナ」を使い分けているのです。
会社でも家でも同じ心構えで、同じように振る舞い、素の自分をさらけ出していたとしたら、おそらく「会社」も「家族」も成立しません。
「本音と建前を使い分ける」という言葉は非常にネガティブですが、「ペルソナを使い分ける」と考えるだけで、人間関係の軋轢やストレスは大きく減らせるのです。
ペルソナを使い分ける
「本音」を言うべきかどうかで悩んでいる人は、「ペルソナの使い分けができていない人」です。
上司から嫌味を言われて、思わず反論したくなったとしても、「今は会社員の仮面をかぶっている。だからどう言えばいいのか」と考えるのです。本音で反論するべきかどうか、ちゃんと判断しましょう。
ちなみに、「ペルソナ」は、「パーソナリティー(個性)」の語源です。個性とは「素の自分」ではなく、「仮面をかぶった自分」なのです。個性というのは、決まりきった1つのものではなく、臨機応変、変幻自在に変わっていいものなのです。そう考えるだけで、ものすごく楽になるでしょう。
「本音を言わずに建前で生きる」と考えるとストレスが溜まります。会社はあなたの舞台です。そこで、あなたはスーパーサラリーマンを演じればいいのです。「理想の自分を演じてみる」のです。
「本音」を言う場合、「ペルソナ」をずらすというテクニックがあります。上司に対する不満をそのまま上司に言えばトラブルになります。「仕事」のペルソナでの不満は、「友人」のペルソナのときに親友に吐き出せばいいのです。
ペルソナは、単なる仮面ではありません。ときに、「盾」となって、ストレスや他人からの攻撃を受け止めてくれます。
仕事で失敗したとしても、それは「仕事」のペルソナが失敗しただけの話。あなたの全人格が否定されたわけでもないし、いちいち落ち込む必要などないのです。
「本音」と「感情」を分けて伝える
そうは言っても、「本音をどうしても伝えたい」という人もいるでしょう。その場合、本音を上手に伝えるコツをお伝えします。
あなたが言いたい本音は果たして本当に本音でしょうか。たんなる「感情反応」ではないでしょうか。
もし、感情反応を実際に言葉に出して言ったとしたら、絶対に後悔します。「本心から出た言葉」であれば、後悔などしないはずです。後で責められたとしても「心から思っているので」と堂々と言えばいいだけです。
たとえば、「バカヤロー!」という言葉は、「本心」から出た言葉ではなく、「一時的な感情」から出た言葉です。それを言葉にして相手に伝えると、必ず後悔します。
「一時的な感情」と「本来の考え、気持ち」(つまり「本音」)は、区別して考えるべきです。本音は、そう簡単には揺るがないものです。
本音の外側に感情がコーティングされているので、「感情」と「本音」を分けることは難しいのですが、「感情」と「本音」を一緒に伝えると、おそらく「マイナスの反応」が返ってきます。特に、夫婦喧嘩のほとんどは、このパターンです。本音を伝える場合は、「感情」を切り離し、冷静に「本音」だけを伝えるべきです。
「人間関係のトラブルが多い」「喧嘩が多い」という人は、「感情をぶちまける」クセを持っている可能性が高いので、「感情」を含んだ言葉に注意するようにしましょう。そうすることで、人間関係は良好になります。
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に22万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ80万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。