生命保険最大手の日本生命保険は23年度から、顧客へ保険商品を提案する営業職員の給与を約7%引き上げる。人件費は100億円超の増額となる見通しで、過去最大規模の賃上げとなる。物価上昇に対応する他業界とは違い、背景には生保業界共通の積年の課題がありそうだ。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)
日本生命「7%、100億円超」賃上げ
生保業界に広がる焦りと驚き
生命保険業界の盟主で、最大手の日本生命は2023年度から、営業職員の給与を約7%増額させる方針だ。正式には労働組合と協議を経て決定されるが、実現すれば営業職員に対する人件費総額は100億円超増加。同社史上、調べられる限りで過去最大規模の賃上げとなる。
営業職員とは、いわゆる「生保レディー」のことで、日本生命には22年9月末時点で5万1542人が在籍している。顧客の職場や自宅などを訪問し、保険商品の提案をして、契約を獲得するのが主なミッションだ。日本生命は3000万件を超える契約を保有しているが、これらの維持・拡大を担い、業績の基盤を支える重要な存在である。
業界では、盟主・日本生命の賃上げ方針を受け、「思い切った上げ幅で、かなりインパクトがある」(大手生保幹部)と、焦りにも似た驚きの声が上がっている。
物価上昇に伴って、政界からは産業界へ賃金上昇を求める声が日に日に大きくなっており、それに反応するかのように、賃上げを表明する企業が続出している。サントリーホールディングスの6%をはじめ、ビール大手4社はそろってベースアップ(ベア)を表明。エンジニアリング大手の日揮HDでも、約10%のベアを実施する方針が報道された。こうした他業界の動きも、生保関係者が焦りを募らす要因となっているようだ。
ただし、今回の日本生命の賃上げ方針は、他業界の物価上昇に対応したものとは性格が違う。生保各社には、賃上げを積極的に進めなければならない固有の事情があった。