日系大手生保で進む営業職員改革
ポイントは給与安定化と既契約重視
大手生命保険会社の主要販売チャネル、営業職員。その評価や給与、教育などに関する諸制度について、生保各社は22年度から本格的な改革に着手する。
日本生命と第一生命、明治安田生命、住友生命の日系大手生保4社のうち、最も早く制度改革に動いたのが明治安田だった。2021年4月には、すでに新制度の骨格を決定。労働組合への説明を始めた。
柱となるのは給与の安定化だ。営業職員の給与は、新契約獲得件数によって大きく変動する。それを、より固定的な給与に変更することで、安心して長く働いてもらうことを目指すわけだ。
同時に明治安田は、既契約者へのアフターフォローや継続率などを重視した評価制度に変更。22年4月から、13年ぶりに営業職員の呼称も変更し、「MYリンクコーディネーター」となる。
加えて、顧客本位の営業を実践していると会社が認めた営業職員には「アドバンス」という資格を付与し、給与も上がる。給与総額を19年度比で5%増額させる方針だ。
営業職員といえば、ターンオーバー(大量採用・大量脱落)問題が生保各社共通の課題だ。かねて対策は打ってきたが、さらにアフターフォローを重視し、給与を安定的にすることで、長年の課題を改善したい考えだ。
明治安田のこうした制度改革は、結果的に他社も同じ考え方であったことが判明する。
第一生命もしかり。世間に大きな衝撃を与えた、元営業職員による19億円超の金銭詐取事件の反省を踏まえ、昨年から営業職員の制度改革を進める方針を示していた。
今年になって判明したのは、入社初期の「初期教育期間」を4カ月から1年間に拡充し、入社後5年間は給与を引き上げ、そして安定化させるというものだ。
さらに入社前の職務経験や能力を踏まえ、3つのコースを設置。さまざまな経歴を持つ人材を採用する方針であり、給与も大幅にアップさせるという。
住友生命も負けていない。そもそも住友は約10年前に業界に先駆けて、営業職員の採用を通年採用から四半期採用に変更し、採用した職員の教育に時間をかける方針をとってきた。その結果、在籍率の改善に成功している。
営業職員の教育制度を充実させ、それによって営業実績が上がれば自ずと給与は安定し、離職率も下がるという考え方だ。これが、根底にある。
22年度も、この教育制度の改革に力を入れる計画だ。具体的には公的な社会保障制度についての知識を改めて強化し、その上で補完的な保障である民間の保障を提案できる姿を目指している。
業界各社が取り入れる給与の安定化の考え方も、限定的だが取り入れる方針だ。住生には、入社半年後から2年間の新人教育期間に優秀な成績を残した営業職員は「選抜研修」が受けられ、さらに希望者には6カ月間の再トレーニングを提供している。この再トレーニング期間の処遇を安定させ、能力アップに集中できる環境を提供するという。
気になる給与水準は「成長と分配」「自己成長への投資」という考え方に基づき、総額約3%のアップを予定している。
では、業界盟主の日本生命はどのような改革を行うのか。同社の新制度「ニッセイまごころマイスター認定制度」とはどのような制度なのか。次ページ以降、日本生命清水博社長のインタビューで明らかにしていく。