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2023年は一体どんな年になるのだろうか。予測は常に難しい。しかし、世界情勢と歴史から洞察し、一定の方向性を見いだすことは可能だ。ビジネスパーソンが23年の動向を的確に捉え飛躍するために、世界96カ国を訪問した元外交官である筆者が、国際政治とグローバル企業の重要論点について考える。(著述家/国際公共政策博士 山中俊之)

西側vs中ロの間隙を縫って
インド・アラブ諸国が台頭

 国際政治で注目したいのは、米国など西側諸国とロシア・中国などの分断が広がる中で、インド・アラブ諸国といった中間的な立ち位置の国の影響力が高まることだ。

 国連の報告書によると、2023年は人口でインドが中国を抜くと予測している。世界で人口1位の国が入れ替わるという象徴的な年となる。

 インドが注目されるのは、人口増や経済成長の点だけではない。ロシアのウクライナ侵攻、台湾海峡の緊迫化など世界情勢が急転する中、米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢である。

 日本人からすると、インドは日米豪印の安全保障枠組みである「クアッド(Quad)」に参加しているし、9月に挙行された安倍晋三元首相の国葬には、インドのモディ首相も参列した。このような事実から西側に近しい印象があるかもしれない。

 一方で、インドは、ロシアから大量の武器を輸入するなどロシアとの関係は昔から親密である。筆者が知るインド人の有識者らも、「インドがロシアとの関係を断ち切ることはないだろう」とその強固な関係に太鼓判を押す。

 インドは、中国やロシアなどが中心的な役割を果たしている上海協力機構のメンバー国でもある。上海協力機構とは、中国、ロシア、インド、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、パキスタンの8カ国で構成され、「西側諸国に対抗する国家連合」である。名称に上海とあるが、本部は北京にある。事務局に中国人が多く、中国が主導している反西側連合と言っていいだろう。