YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」で、メンタルの病気について発信し続けている、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介氏。インタビュー第8回では、避けたほうがいい人間関係について話を聞いた。本記事では、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の発売を記念して、メンタルを回復させる行動について話を聞いた。【第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回第8回の記事はコチラ】

人気精神科医が教える、すり減ったメンタルを回復させる行動3選【精神科医・益田裕介氏インタビュー(9)】一人で頑張りすぎないで(Photo: Adobe Stock)

つらかったことを図解し、言語化する

――メンタルが回復する行動を3つ挙げるとしたらなんでしょうか
益田裕介(以下、益田) 1つは、やっぱりマインドフルネスです。目を閉じて深呼吸をすると呼吸がゆっくりになります。そうすると心臓の動きもゆっくりになって、だんだんと不安が減っていきます。

――脈拍がゆっくりになることはメンタルにも良いのでしょうか?
益田 心は体の状態に引っ張られます。強制的に笑顔をつくったら楽しくなるのと同じで。呼吸がゆっくりになると、脳もゆっくりになって回復するんです。患者さんにも、眠れないときは、眠れなくてもいいから目を閉じて深呼吸してるだけでも体が休まりますよと伝えています。

――メンタルが回復する行動2つめはなんでしょうか
益田 感情を表現してみたりとか、自分の考えを言語化していくということです。特にリフレーミングといって、ネガティブなできごとをポジティブにとらえ直すことも効果があります。ネガティブなできごとに見えるんだけど、実はこんな良い点もあるよねというのがリフレーミングなんです。

――例えば、上司に「お前は無能だ」と言われたとしたら、どのようにリフレーミングするのでしょうか?
益田 逆に成長の機会だよねとか、この上司とはそのうち別れるけど、今傷ついたほうが成長の機会でよかったねといった感じです。大きい事故になる前に、上司に叱られてよかったよねというような感じです。

――自分の感情や考えを言語化するのはどういうことでしょうか
益田 つらかったことを言葉にして、吐き出すのも大事です。例えばその現象を図に描いたりということも有効です。とにかく書き出してみるって結構大事なんです。日記もいいけど、僕は図解をおすすめしています。

――なぜあえて図解が良いのでしょうか
益田 日記だと文章が一直線で、複雑な状況を表すのが難しいんです。そうではなく、あっちを立てればこっちが立たずみたいなところまで含めて図で描いたほうがいいんじゃないかなと思います。この人とこの人は喧嘩し合ってて、この人とこの人は仲が良くてとか。

――人物相関図のようなイメージでしょうか
益田 そうです。簡単な相関図みたいなイメージです。人間関係でも、仕事のことにしても。これをやりたいけど、これしたらこの時間がなくなるなとか。細かい関係性って、日記とかだとちょっと表現しにくいから、図のほうがいいんじゃないかなと。今、みんなパワポとか使って図にするのに慣れていたりすると思うので。

――自分の悩みを図にするコツなどはありますか?
益田 実は、描き方ってあんまりなくて。その都度その都度、自分で作れるかどうかなんだと思います。バーッと描いては描き直してとか、そういう感じなんじゃないかな。

――では、問題が言語化できたらどうしたらいいのでしょうか?
益田 問題点が見えたら、これを削って、こっちを諦めてって、一つひとつやっていくしかないですよね。いろいろ書いていくと、見えてくることがいっぱいあります。

未来が良くなると思うと生きていける

――メンタルが回復する行動、3つめはありますか?
益田 後は、メンターといいますか、尊敬できる人としゃべるというのが良いと思います。こうなりたいとか、こういうのが素晴らしいとか、こういうのは美しいなと思うことがやっぱり人間にとって大切なんです。

――それはなぜでしょうか
益田 今の苦しさって変えられないんだけど、未来が良くなると思うと生きていけるから、人間って。だから、その未来を体現しているようなメンター、尊敬できる人と会話すると、すごく成長になります。尊敬できる人って大体優しくて他者を認めてくれるから。

――先生にとってメンターとなる方はいらっしゃいますか?
益田 年上の先生や先輩とかでしょうか。世の中良い人や助けてくれる人もいっぱいいると思うんです。だから、そういう人に愚痴を言ったり、アドバイスをもらったり、話したりすると、やっぱりすっきりしますよね。何かベタですが。

(取材・構成 書籍編集局 工藤佳子)