アップルの現実世界は今年、厳しいものになりそうだ。だからといって、仮想現実世界に急ぐべきだというわけではない。長年うわさされていたアップルの拡張現実(AR)ヘッドセットが、ようやく近いうちに登場するかもしれない。アップルのサプライチェーン(供給網)に詳しい天風国際証券の有力アナリスト、郭明錤(ミンチー・クオ)氏は先週、同社が今春、あるいは6月に開催される開発者会議でヘッドセットを発表し、年後半に発売するとの予想を示した。ブルームバーグ・ニュースも週末、アップルが今春に同製品の発表を計画していると報じた。発表がいつになるにしろ、アップルのARヘッドセットには厳しい道のりが待ち受けている。AR技術については、資金が潤沢なIT(情報技術)スタートアップ企業も業界の最大手企業も苦戦が続いている。マイクロソフト、フェイスブック、グーグル各社も本気で取り組んできたが、現在までのところ期待通りの成果は得られていない。フェイスブックは仮想空間「メタバース」の構築を目指し、「メタ・プラットフォームズ」に改名さえした。メタバース普及には、ARと仮想現実(VR)が鍵を握る。しかし、メタは商用ARグラスの開発を昨年中止したと報じられているほか、VRプロジェクトも赤字を垂れ流している状態だ。同社のVR事業を含むリアリティーラボ部門は2022年1-9月期に94億ドル(約1兆2400億円)の営業損失を出した。