山本健人(やまもと・たけひと)

2010年、京都大学医学部卒業。博士(医学)

外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。運営する医療情報サイト「外科医の視点」は開設3年で1000万ページビューを超える。Yahoo!ニュース個人、時事メディカルなどのウェブメディアで定期連載。Twitter(外科医けいゆう)アカウント、フォロワー10万人超。著書に19万部突破のベストセラー『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)、『医者が教える正しい病院のかかり方』『がんと癌は違います~知っているようで知らない医学の言葉55』(以上、幻冬舎)、『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)、『もったいない患者対応』(じほう)ほか多数。
Twitterアカウント https://twitter.com/keiyou30
公式サイト https://keiyouwhite.com


美しく精巧な人体をめぐる冒険――著者より

 医学生時代に経験した解剖学実習で、大変驚いたことがある。

 それは、「人体がいかに重いか」という事実だ。脚は片方だけでも一〇キログラム以上あり、持ち上げるのに意外なほど苦労する。一見軽そうな腕でも、重さは四~五キログラムである。想像以上にずっしり重い。

 私たちは、身の周りにあるものの重さを、実際に手にしなくともある程度正確に推測できる。だが不思議なことに、自分の体の「部品」だけは重さを感じない。日常的に「持ち運んでいる」にもかかわらず、である。

 一体なぜなのだろうか?

 その答えを求めると、美しく精巧な人体のしくみが見えてくる。

 人体がいかに素晴らしい機能を持っているか。

 健康でいる限り、私たちはそのことになかなか気づけない。

 私たちは、たとえ走っている最中でも道路標識を読むことができ、前から歩いてくる人をよけることができる。頭は上下に激しく揺れているにもかかわらず、視界が揺れて酔うなどということはない。

 あなたは、今これを読んで「ウンウン」とうなずいたかもしれない。だが、その頭の動きに合わせて、あなたの視界が上下に揺れることはない。

 ところが、スマートフォンのカメラを目の前に構え、走りながら動画を撮影してみればどうだろうか。収められる映像は大きく揺れ動き、視聴に耐えるものではないはずだ。

 私たちの視界と、カメラが収める映像の違いは何なのだろうか。そう考えると、一つの真実が見えてくる。私たちの体には、「視界が揺れないための精巧なシステム」が備わっているということだ。

 私は医師として医学を学び、人体の構造・機能の美しさに心を奪われてきた。一方で、このすばらしいしくみを損なわせる、「病気」という存在の憎らしさも実感してきた。病気の成り立ちを理解し、病気によって失われた能力を取り戻すのも、医学の役割である。

 医学を学ぶことは、途方もなく楽しい。知れば知るほど、学ぶことの楽しさは指数関数的に増大していく。私が医学生の頃から絶えず味わってきた興奮を、誰かと共有したい。知識の点と点が線となってつながり、思わず膝を打つときのときめきを、誰かに伝えたい。

 本書が目指すのは、過去から未来まで、頭から爪先まで、人体と医学を楽しく俯瞰することだ。幼い頃に買ってもらった新しい図鑑の頁をワクワクしながらめくったときのような、心躍る体験を届けたいと思う。

 それでは、さっそく始めよう。

 あなたの体をめぐる知的冒険を。


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山本健人 著
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「まだまだ人体は謎だらけである。本書は、人体と医学についてのさまざまな知見について、魅力的な話題を提供しながら読者を奥深い世界へと導く」