「アタマを使え!」という言葉を聞くことがある。だが、「どんな風にアタマを使えばいいのか?」と聞かれたら答えるのは簡単ではないだろう。そこでお薦めしたいのが『新版[図解]問題解決入門』という書籍。「考える」という行為がどんなものなのか、その全体像がわかると読者から強く支持されるロングセラーだ。本連載では、本書のエッセンスをお伝えしていく。
「問題がない」と思うことがいちばん”問題”
順調に物事が進んでいるときには、問題がないように見えるものです。
また、「順調にいってます」という代わりに「問題はありません」という表現を用いたりします。
その半面は”好事魔多し”であり、また”禍福はあざなえる縄のごとし”であって、問題のタネがいつの間にか芽生えているものです。
ということになると、「問題がない」と思っていることが、いちばん問題となってきます。
「問題を感じる」のがスタート地点
「何か問題がありそうだが、何が問題かよくわからない」という場合はどうでしょうか。
このような人は問題意識のスタート時点に立っていると言えます。
「問題とは目標と現状のギャップである」ので、問題が何かよくわからないというのは、目標か、現状か、その両方がはっきりしないという状況を意味しています。
「問題がありそうだ」と感じているときというのは、漠然とですが、現状に対して不満を持っているか、あるいは「このままではいけない」という危機感を持っているものです。
何か不安を感じさせる材料や兆候が存在していると言ってもよいでしょう。
現状に対して、不満や不安があるという事態は、ある意味では、現状否定の気持ちが働いているということになります。
ということは、現状よりももっとちがった状態を期待する気持ちがあるわけです。
問題解決プロセスの3つの要素
この場合は、「どういう状態になれば良いのか」と自問自答してみます。
「望ましい状態」や「あるべき姿」についてのイメージが明確になれば、そうした目標と現状とのギャップも明確になってきます。
問題解決のプロセスは料理をつくる場合とよく似ています。最高の料理は、
1. 新鮮な材料
2. 正しい料理法
3. 料理人のウデ
によってつくられます。
「問題が何かわからない」という場合も、こうした三つの要素が絡んでいるといえるでしょう。
情報が不足している
「新鮮な材料」に相当するのは、質の良い情報です。問題を組み立てていくためには情報が不可欠です。
陳腐な情報や質の悪い情報からは、良い問題形成ができません。
したがって、情報が不足しているために「問題が何かわからない」という場合もあるわけです。
問題形成のやり方がわからない
次は「正しい料理法」です。質の良い情報に恵まれていても、それらの情報から、上手に問題を組み立てる方法がわからないという人もいるでしょう。
同じ情報に接しても、問題意識のある人は、すぐさま問題の所在に気づいて問題形成に取り組もうとします。
問題意識に欠けている人は、重要な情報をあっさりと見落としてしまいます。
また、重要な情報だと気がついて、何とか問題形成にチャレンジしてみても、途中でくじけてしまう人もいます。
このような人は、問題形成の方法を身につけることです。料理法をまちがえば、せっかくの新鮮な材料もだいなしになるのと似ています。
経験が不足している
最後は「料理人のウデ」です。職人やスポーツマンのウデのよしあしは、生来の素質もあるでしょうが、なんといっても練習量が大きくものを言います。
問題解決も、多くの問題について練習を積めば、ウデが上がってきます。
ウデの良い料理人は、たとえ材料が悪くても、それなりの味を演出して客を納得させる力を持っています。
また、ベテランの勘というのも軽視できません。この魚は、どのように料理すればうまく食べられるか、ひと目見ただけで判断できるのもウデの良い証拠です。問題のパターン認識とよく似ています。
問題解決について慣れている人は、問題を見つけた段階で、これはどんなタイプの問題か、今までのやり方で解決できそうか、新しい解決法が必要か……と問題のパターンを判別できます。
「問題がわからない…」にもいろいろな場合ある
以上、料理の仕方になぞらえて、問題の見つけ方、とらえ方について述べました。
「問題がわからない」という場合も、
1. 情報が不足していて問題形成ができない場合
2. 情報はあるが、問題形成のやり方がわからない場合
3. 経験不足で突っ込みが不足している場合
など、いろいろ考えられるのです。