
トランプ米政権による相互関税政策は、フィリピン経済には限定的な影響とみられる。一方、内需拡大と利下げ継続が景気を下支えしている。インフレ鈍化も追い風となっている。政局ではマルコス家とドゥテルテ家の対立が激化。経済状況以上に注目を集めることになりそうだ。(第一生命経済研究所主席エコノミスト 西濵 徹)
相互関税の税率はインドネシアと
同じ19%に
このところの世界経済や金融市場は、トランプ米政権の関税政策に翻弄されている。
米国は、安全保障上の脅威への対応を目的に、自動車や自動車部品、鉄鋼製品、アルミニウム製品への追加関税を導入した。さらに、貿易赤字の是正を目的に、全ての国に一律10%課税し、一部の国や地域にはさらに税率を上乗せする相互関税を導入する方針を示した。
相互関税はいったん発動されたが、直後に金融市場が動揺したため、上乗せ分を90日間停止し、その期間内に個別に協議を行う方針に変更された。
また、トラン米大統領は7月初めに90日間の期限が到来する直前、事実上期限を延期した上で、各国や地域に新たな税率を通告した。なお、米国はフィリピンに対する相互関税の税率を17%としたが、同月に通告した新税率では20%と3と%ポイント引き上げられ、直前に合意に至ったベトナムと同水準とされた。
しかし、同月22日にフィリピンのマルコス大統領は訪米してトランプ氏と会談を行い、通商協議が合意に至ったことを明らかにした。最終的な相互関税の税率は19%と新税率から1%ポイント引き下げられ、これは直前に合意に至ったインドネシアと同水準だった。
次ページでは、関税の影響も含めたフィリピン経済の先行きを検証する。