「アタマを使え!」という言葉を聞くことがある。だが、「どんな風にアタマを使えばいいのか?」と聞かれたら答えるのは簡単ではないだろう。そこでお薦めしたいのが『新版[図解]問題解決入門』という書籍。「考える」という行為がどんなものなのか、その全体像がわかると読者から強く支持されるロングセラーだ。本連載では、本書のエッセンスをお伝えしていく。
解決すべき問題を“発見”する
問題を解決するためには、多くの情報の中から、目標達成に関連のあるものだけを「選び出し」、「その情報を関連づけて問題の構造を明らかにすること」が重要です。
「すでに問題が確定している場合」や、「上から課題として与えられている場合」には、「これは、どういう問題なのか、どんな要素から成り立っているのか」と分析的に考えるのも可能です。
しかしそうではないケース、いわゆる“目に見えない問題”も多いでしょう。その場合には、問題が起こるのを待っているのではなく、「どんな問題がかくれているか」と探し出してみたり、「どんな問題を解決しなければならないか」と積極的に考えてみる必要があります。
「問題を分析する」という言葉がよく使われますが、この場合は、「問題を組み立てる」「問題を形成する」という言い方がより適切でしょう。
「わかっていること、いないこと」の把握が重要
情報には「目や耳から入ってくる直接的な情報」と、「文章や数字で表わされる間接的な情報」があります。
「自分が直接目で見て確かめている事実」というのは意外に少ないもので、通常は、通勤途中で見聞きする事柄や自分の職場で見聞きする事柄が大部分です。
それに対して、「他人や他所でつくられた間接情報」とは、たとえば、上からの指示、下からの報告、他部門からの伝達、業界の資料、政府の発表した統計データ、専門誌や新聞の記事などです。なかには、クチコミという“情報”もあります。
これらの情報は、本当に事実を示しているだろうか、情報相互の間には矛盾はないだろうか、作為的な情報は含まれていないだろうか……などを考えると、情報が多い状況を素直に喜んではいられません。
本当に必要な情報が入っていない場合もあるからです。
「何がわかっていて、何がわからないのか」。この認識が大事なのです。
新しい問題は環境の変化から生まれてくる例が多いので、情報の中では「環境変化に関する情報」が最も重要であると言えます。
時代の最先端の問題意識を持つために不可欠な情報として、この環境情報を三つに要約してみます。
1. 国際情勢に関する情報
これからの時代は国際感覚なくしては真のエリートたりえません。「世界がわかれば、日本がわかる」のです。
国際関係に関するおもな情報は、政治、経済、文化についてのものです。
グローバルな目を養って、日本の現状、企業の現状を見つめることで、変化へ適応するための問題意識を持つことができます。
したがって海外で編集された雑誌などに目を通す努力も必要になるでしょう。
2. 技術革新に関する情報
コンピュータ技術をはじめ、新産業素材の開発、バイオテクノロジーなどの分野における進歩はめざましいものがあります。
新しい技術や材料の発明によって、従来の製造方法や製品そのものがまったく価値を失ったり、産業構造が大きく変わってしまう、きわめて「ドラスティックな変化が起こる時代」なのです。
3. 価値観の変化に関する情報
生活感覚やライフスタイルはどんどん変化してきています。
“脱工業化社会”と言われて久しくなりますが、今日では実感として受け止められるようになってきました。
高度産業社会、高度消費社会の後にくるものに焦点をあて、問題を探してみることです。
価値観の変化をよむには、生活観、職業観、労働観、消費観などの変化に着眼します。
モノ離れ、労働組合離れ、社会移動の増大、ボランティア志向、個人主義化など現象面から見るとすでにさまざまな変化の兆候が見られます。
こうした変化と自分の属している企業や組織、また自分の職務や職種との関連について考えをめぐらせてみるのも大切です。
最後にものの見方の基本として、たえず注意を払う必要のある事柄を三つ挙げておきましょう。
1. 目先にとらわれず、長い目で見る
2. 一面だけで見ず、多面的、全面的に見る
3. 枝葉末節にこだわらず、本質を見る
これは東洋学における“思考の三原則”と言われるものです。