株式投資をする人たちの間で大きな支持を集めている話題の1冊が『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。60問のクイズに答えるだけで、「株式投資のコツ」や「売買のタイミング」をつかめる手軽さが人気だ。「チャートを勉強したけど成果が出ない……」。その原因はどこにあるのか。チャートで稼ぐにはどうすれば良いのか。『株トレ』の著者であり、ファンドマネジャーとして2000億円超もの資金を運用してきた経歴を持つ楽天証券・窪田真之氏に話を聞いた。(取材・構成/伊達直太)
成行と指値、どちらで注文を出していますか?
チャートを見て「この株は上昇しそうだから買いだ」と判断した時、成行と指値のどちらで注文を出していますか?
多くの個人投資家が指値注文を好んで使っていますが、実は指値を好む人ほど「株で勝てない人のダメな思考」にハマっている可能性があります。
例えば、1000円の株を買おうとして980円の指値注文を出すケースを考えてみてください。
約定するためには、1000円から980円に下落しなければなりません。その一方で、あなたはその株が上昇すると見込んで買い注文を出しているわけで、一度980円に下がった後、反転して上昇していくと期待していることになります。
つまり、下がって上がるという相反する値動きを一度に予想しているのです。整合性を欠いた考え方だと気づくでしょう。
指値注文がチャンスを逃す原因になる
さらに言えば、上昇トレンドにおける指値の買い注文では、チャンスを逃してしまう可能性があります。
勢いのある上昇トレンドにおいては、買いたい人がたくさんいるため、株価が下がる確率よりも上がる確率が高くなります。成行であれば確実に約定しますが、「少しでも安い値段で買いたい」と指値注文を出せば、あっという間に上がっていく株を逃すことにつながるのです。
下落トレンドで保有銘柄を売る場合も同じです。指値の売り注文は、損失の拡大を放置してしまうことにつながります。
「少しでも高く売りたい」と考えて指値の売り注文を出しても、勢いのついた下落トレンドでは上昇より下落の確率が高いため、容赦なく膨らんでいく損失をじっと見続けることになるでしょう。
わずかばかりの利益を取ろうとして、その先のチャンスを逃したり傷口を広げてしまっては、元も子もないでしょう。
株のトレードで稼ぐために最も重要なことは、トレンドに逆らわないことです。
そのため、チャンスだと思った時には成行で買い、危ないと思った時には成行で売るしかありません。
成行注文は、高く買って安く売る損な注文に思えるかもしれませんが、そうではありません。成行で買うからチャンスを確実に掴むことができ、成行で売るから損失を最小限に抑えることができるのです。
株のトレードで稼げる人のほとんどは成行でトレードをしています。指値する場合は、すぐに買いが成立するように、株価より上に買い指値を入れることもあります。買いの判断をしたら、原則すぐに約定するようにします。
ただし、1日に買わなければならない株数がきわめて大きいプロのトレーダーは、成行と指値を併用します。寄付に少し成行で買い、下値に少し指値も入れ、1日かけて成行と指値を使い分けながら、少しずつ買っていきます。大引け成行注文で、予定の株数を買い終わるようにします。
100株だけ買えば良い個人投資家の場合は、チャンスだと思った時に成行で買うのが得策です。