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ビートルズといえばロックという印象が強いだろう。しかし、実は、メンバーは多様な音楽の影響を受けていた。ジョージ・ハリスンやポール・マッカトニーの幼少時代の経験にまでさかのぼり、ジャズからフランク・シナトラ、子供向けの音楽まで、意外な関係性を紹介する。本稿は、北中正和『ビートルズ』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。
ロック以前の音楽の影響について
発言していたジョージ・ハリスン
ビートルズがいつも手にしていたのがロックにつきものの電気楽器だったため、彼らはロック世代の代表としてジャズ世代との断絶の旗振り役だったように思われていますが、ジャズ歌手が好んで取り上げる「イエスタデイ」や「ブラックバード」に明らかなように、彼らの音楽にはロック以外の音楽の要素が少なからず含まれています。
その2曲は共にポール・マッカートニーの作品ですが、ビートルズのメンバーの中で、ロック以前の音楽からの影響について、いちばん客観的な発言を残しているのは意外なことにジョージ・ハリスンです。
「音楽は常に超越的な性質を持っているから、自分では思いもかけないような部分にまで届くんだよ。そしてそれが、表現しようもない形で影響を与えている場合もある。自分とは関わりがないと思っていたものが、何年も経ってからひょっこり顔を出すことがあるんだ。ビートルズはあらゆるタイプの音楽に触れていて幸運だったと思う。僕らはラジオから流れてくるものなら何でも聴いた。あの頃はあれが何よりの楽しみだったんだよ」(『THE BEATLESアンソロジー』P27)
音楽好きな家族・親戚に囲まれて育ったジョージは、ロックンロールに直接つながるカントリーやブルース以外にも、ホーギー・カーマイケル、グレン・ミラー、ジャンゴ・ラインハルト、ステファン・グラッペリ、ビング・クロスビー、インク・スポッツなど多岐にわたる音楽に子供のころからふれていました。イギリスのミュージック・ホール的な音楽や他愛のない遊びの音楽も聞いていました。彼はこんなふうに語っています。
「『アイム・ア・ピンク・トゥースブラッシュ、ユーアー・ア・ブルー・トゥースブラッシュ』とか――そんなものですら、どこかで僕らに影響を与えてるんじゃないかな。こっちが望むかどうかは別としてね。そういうものすべてが何らかの形で僕の中に入っていて、どこかでふっと顔を覗かせるんだよ」(『THE BEATLESアンソロジー』P26)
彼が引き合いに出した「アイム・ア・ピンク・トゥースブラッシュ」はEMIのパーロフォン・レーベルが1953年に子供向けに発売したコミカルな歯磨き歌で、マックス・バイグレイヴスが子供たちと一緒にうたっていました。ジョージが影響を受けた例としてあげているのは、「イエロー・サブマリン」の中盤あたりの音の遊び、ブクブクという気泡の効果音やおしゃべりの部分です。
サイケデリック・ロックと解釈されることもあった「イエロー・サブマリン」ですが、この曲は幼児向けの歌として発想されたものでした。それまでの常識からすれば、ロック・バンドが幼児向けの歌を作ること自体が「マジか?」「ダセー!」と思われたでしょう。しかし彼らはもとから好きだったユーモアやナンセンスな言葉遊びを生かして子供向けの歌がロックになることを納得させたわけです。
父親も祖父も音楽家だった
ポール・マッカートニー
ポール・マッカートニーの父親ジムは若いころジミー・マック・ジャズ・バンド(ジム・マックス・バンドという表記も見かけます)を結成してトランペットを吹いていました。伯父のジャックは同じ楽団のトロンボーン奏者でした。
第二次世界大戦後、父親はバンド活動を止めていましたが、家にあるピアノをよく弾いていました。聞いた曲としてポールは「ララバイ・オブ・ザ・リーブス」「ステアウェイ・トゥ・パラダイス」「スタンブリング」「ベイビー・フェイス」などをあげています。ポールも、父親にすすめられて、家のパーティでピアノを弾くことがありました。「レッド・レッド・ロビン」「キャロライナ・ムーン」などです。年上のいとこのエリザベスは「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「フィーヴァー」「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」などを聞かせてくれたとも語っています(『THE BEATLESアンソロジー』P18~19、22)







