子どもの口座に入金しても
税務署にバレる可能性が大

 それではそのようなタンス預金を大量に抱えている人はどうすればいいのでしょうか。

 たとえば「窓口に持っていくから怪しまれる。だったら毎日少しずつATMで入金しよう」と考える人も多いようです。

 しかし、この方法はあまりお勧めできません。

 たとえばAさんの母親がタンス預金でためたお金が数千万円あったとします。

 栄一に代わるまであと1年しかありませんから、母親は相続税の支払いから逃げるために毎日数十万円、雨の日も風の日も近所のコンビニATMにいき、Aさんのキャッシュカードを使って入金します。こうして1年後に数千万円を無事、Aさんの口座に入金しました。

 このタンス預金をした母親が、その数年後亡くなったとします。すると税務署はその亡くなった方や、Aさんを含めた相続人の預金の取引明細を調べます。

 その結果、母親が亡くなる数年前に、Aさんの口座になぜか毎日ATMでまとまったお金が入金されている事実をつかみます。

 税務署員はAさんに対し「毎日、数十万円ものお金がコンビニから入金されていますが、どうしてでしょうか?合計すると何千万円ですよね。一方で亡くなったお母さんの相続税の申告書には、現預金はほとんどないと記載されています。あなたの口座に入金したお金、実はお母さんのお金じゃないですか?」と問い詰めることでしょう。

 したがって、タンス預金を慌てて子どもの口座に入れることもお勧めできないのです。

 2023年度の税制改正で、生前贈与の持ち戻し期間が3年から段階的に7年へと、納税者にとっては「改悪」になります。

 一方で相続時精算課税制度がかなり使い勝手が良くなり「改良」となります。相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除を新設した形になっており、同制度を適用する書類を出す必要はありますが、年110万円までの贈与に関しては贈与税も相続税もかからないため、コツコツ贈与してもイイのかもしれません。

 もっともそのタンス預金の金額次第ですし、贈与する親の年齢次第です。もっと言えば、相続時精算課税制度自体は一度適用すると「途中で抜けられない」制度になっているため、今後の税制改正の変更内容によっては「やっぱり相続時精算課税制度を利用しなければ良かった」ということになる可能性もあります。タンス預金がある方は慎重に考えるべきとは思いますが、今回の改正が「改良」であることに間違いはないでしょう。

 最後に、国は「高齢者に資産が偏っているので、なるべく早く子どもなどに移転することを望んでいる」と考え、「お金が若い世代へ流れる」ことを狙っているようです。しかし、合法的な手段で表に出した上で、きちんと贈与対策を取ることで、多額の税金を支払うことを防ぐことができるのではないかと考えています。

 ただし、お金でも金塊でも、いったん「タンス」に入れてしまうと表に出すことが非常に難しくなります。相続時精算課税制度も含めて、裏にしまい込まない解決方法を探すべきでしょう。