半導体への関心が高まるなか、開発・製造の第一人者である菊地正典氏が技術者ならではの視点でまとめた『半導体産業のすべて』が発売された。同書は、複雑な産業構造と関連企業を半導体の製造工程にそって網羅的に解説した決定版とも言えるものだ。
今回は同書より、世界の半導体市場の推移を解説した述べた部分を紹介する。
自動車産業を上回る規模
半導体産業が辿ってきた道のりを、「世界半導体市場の推移」という面からレビューしてみましょう。
次の図には、1985年から2021年までの世界半導体市場の年ごとの推移を示してあります。このグラフからもわかるように、世界半導体市場は、年ごとに多少のバラツキは見られますが、マクロ的に見れば右肩上がりの成長を続け、直近の2021年には5529億ドル(58兆円)の大きな市場になっています。
これは自動車業界の市場を少し上回る規模で、半導体が最終製品ではない(部品的)という性格を考えると、いかに大きな産業になっているかがわかります。
メモリの急拡大が半導体市場を巨大なものにした
このような半導体市場を製品別に見ると、次の図のようになります。このグラフには、1985年から2020年までの、メモリ、マイクロ、ロジック、その他(アナログ、オプト、ディスクリート)の割合が示してあります。
1985年から1995年の10年間で、「その他」が60%から20%に減少したのに対し、メモリが15%から40%に大きく伸びたことがわかります。
また2000年以降は、メモリとその他はあまり変わりませんが、マイクロが減少し、ロジックが増加してきています。
その他の半導体が減少したように見えるのは、このグラフはあくまでも製品別の割合を示したもので、製品の絶対数を表わしているものではなく、したがって市場全体が拡大しているときには、伸び率の少ない製品の割合は低く見えます。
いっぽう、メモリの伸びは、画像(特に動画像)などのデータを扱うため大量のメモリ容量が必要になってきたこと、さらに不揮発性メモリとしてのフラッシュ(特にNANDフラッシュ)への需要が急拡大したことがあります。
(本記事は、『半導体産業のすべて』から一部を転載しています)