「老後のため」に貯めたお金を定年後も取り崩さず、むしろさらに資産を増やそうとする人は少なくない。しかし、「正しいお金の使い方」を指南するベストセラー『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』は、いつまでも貯蓄を増やし続ける生活では「決して幸せにはなれない」と断言している。
そこで本稿では、本書の内容をベースに、「不幸な老後」になる人に共通する“間違ったお金の使い方”を明かす。(構成/根本隼)

「不幸な老後」になる人に共通する“間違ったお金の使い方”とは?Photo:Adobe Stock

お金は「死ぬまで」に使い切った方がいい

 この30年間、日本人の平均給与(実質)はまったく伸びておらず、むしろ微減しているのが現状だ。社会全体で給与水準が底上げされていくという、経済成長のトレンドは久しく訪れていない。

 一方で、年齢とともに基本給が徐々に上がっていく「年功序列型」の給与制度を敷いている会社が多いのも事実だ。そのため、ベースアップは望めなくとも、定期昇給による将来の収入増を見越して、どうしても若いうちは節約してお金を貯めるマインドが優勢になるのは仕方ないことだ。

 しかし、年を取ってからも資産を取り崩さずに貯蓄し続けると、死ぬまでに使い切れないお金が必ず発生する。そうすると、「結局使わないお金のために働いた=ムダ働きした」も同然になってしまう。だからこそ、「死ぬ時点でゼロになるように、お金は計画的に使い切るべきだ」というのが、『DIE WITH ZERO』の主張だ。

 以下では、本書より一部を抜粋・編集して、「お金の賢い使い切り方」をご紹介する。

老後もお金を使わない=時間とエネルギーの浪費

 生きているうちに金を使い切ること、つまり「ゼロで死ぬ」を目指してほしい。そうしないと、人生の限りある時間とエネルギーを無駄にしてしまう。

 もちろん、死ぬ前にゼロに到達すべきではない。死ぬ直前にひもじい思いをしたい人などいない。だが、せっかく貴重な時間と労力を費やして稼いだ金を生きているうちにできる限り使い切ってほしいと思うのだ。
(P.74~75)

「不幸な老後」を招かない、シンプルな「お金の使い切り方」

 こうした考えを世に訴えているのは、私だけではない。古くは1950年代、ノーベル賞を受賞した経済学者のフランコ・モディリアーニが、似たような仮説を提唱した。

 彼の基本的な主張は、生涯を通じて金を最大限に活用するには、「死ぬときに残高がちょうどゼロになるように消費行動をすべき」というものだ。仮に、もしいつ死ぬかがわかっているのなら、そのときまでに金を使い切れば、最大限の喜び(と効率)が得られることになる。

 「いつ死ぬかなんてわからない」という現実的な疑問に対して、モディリアーニはシンプルな答えを示している。「安全に、かつ不要な金を残さないためには、人が生きられる最長の年齢を想定すればいい」と。つまり、自分が可能な限り長寿をまっとうすることを前提に、1年当たりの消費額を決定するのだ。

 だが、多くの人はそれすら計算していない。なんとなく必要以上の金を貯め込んでいるか、必要なだけ貯めていないかのどちらかだ。
(P.75~76)

(本稿は、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』より一部を抜粋・編集して構成しました)