
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が6月に開始した金融総合サービス「エムット」。三井住友フィナンシャルグループの「Olive(オリーブ)」から2年遅れのサービス開始となったが、挽回は可能か。オリーブとは「戦い方が全然違う」と言うMUFGの亀澤宏規社長は、ある危機感を抱きながらも独自の“横作戦”に自信を見せる。そして、それを引き継ぐ後継者に求める資質とは何か。特集『銀行・証券・信託 リテール営業の新序列』の#7で、亀澤社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
三菱UFJFGの新サービス「エムット」
本質はポイント競争ではない“横作戦”
――6月に開始した「エムット」の進捗はいかがですか。
評判は良く、クレジットカードの申し込みは前年同期比で2倍に達しています。インターネットの検索件数も約4倍に増え、スーパーマーケットでも使える点が好評です。
――どういう点が消費者に受け入れられていると考えられますか。
ポイント還元が話題になっているのは事実です。ただ、われわれは「エムットクレジットカード」をつくり、そこでポイント競争をしているわけではありません。
エムットの本質は、預金、クレジットカード、相続、証券といったグループ内の金融機能を全て横でつなげる「横作戦」にあります。その全体的な世界観はまだ伝え切れていない。
例えばEコマース系のクレジットカード会社は小売りや通信、金融を連携させていますが、われわれは金融領域の中でマネタイズポイントを複数持ち、連携させることで独自のサービスを構築します。例えばわれわれの複数のサービスを利用してくださるお客さまには、預金金利を優遇するといった形にしたい。
これを共通IDでやっていくのがわれわれの作戦なのですが、この構想はデジタルバンクなしには完成しません。
先行する三井住友フィナンシャルグループの「Olive(オリーブ)」を追撃すべく、MUFGが始めた「横作戦」。しかし、その構想は未完成だという。作戦の成否を分けるデジタルバンクとは何か。亀澤社長が、ある「危機感」を次ページで吐露し、構想の狙いを明かす。