今週は米国のオバマ大統領が議会で一般教書演説を行いました。その中で経済に関する部分を安倍政権の経済運営と比較してみると、日本の経済政策の問題点が改めて明らかになるのではないでしょうか。
安倍首相の賃上げ要求は
格差をさらに拡大するだけ
安倍政権は金融緩和と財政出動によりデフレ脱却と景気浮揚を目指しており、その成果は株価の上昇と円安の進行という形で金融市場にさっそく現れています。ただ、国民が景気回復を実感できるようにするには、賃金の上昇がどうしても必要となります。
政府も当然それを分かっているからこそ、今週、安倍首相自らが経済三団体に賃上げを要請しました。ちょうど春闘のシーズンなので、今の段階で給与本体の賃上げは難しいだろうけど、業績の改善に伴って賞与が増えるのを期待してのことでしょう。
一方で米国はどうでしょうか。米国ではリーマンショック以降の景気回復がまだ不十分な中で、雇用の改善が遅れているのみならず格差も拡大している現実を踏まえ、オバマ大統領は一般教書演説で雇用増大のための様々な政策に言及するのみならず、賃上げの必要性も主張しています。
しかし、その手法は日本とはだいぶ異なり、連邦政府が定める最低賃金を現行の7.25ドル/時から9ドルに引き上げると言明しました。現行の最低賃金では年収が1万4500ドルにしかならず、夫婦と子ども2人の家庭では貧困ライン以下の生活になるという現実を踏まえたものです。
ちなみに、オバマ大統領は、一般教書演説の中で“企業経営者がかつてないレベルの高給を得る一方で最低賃金が上がらないのはおかしい”とまで言及しています。即ち、米国での賃上げの目標は、格差が拡大する中で賃金が下がり続ける中流階級以下の生活を改善することなのです。
それと比べると、安倍政権の対応はどうでしょうか。日本でも格差は拡大していますが、その要因の1つは非正規雇用の増大です。しかし、春闘の主役は主に正社員の既得権益を守る労働組合であり、かつ賞与をもらえない非正規社員はたくさんいます。
そうした事実を考えると、政府が春闘での賞与増大を期待しているとしたら、非正規社員の所得増大と社会の格差の是正よりも、正社員という特権階級の所得増大をまず実現しようとしていることになります。