銀行不安がシステミックな危機に
発展しないと考える理由
米国のシリコンバレー銀行(SVB)に始まる銀行不安は、海を越えて欧州にまで波及し、世界経済を大きく揺るがしている。
オックスフォード・エコノミクスは、欧米当局のスピーディな対応もあり、銀行システム全体に及ぶシステミックな金融危機には発展する可能性は、今のところ小さいとみている。
問題となっている銀行は、いずれも固有の脆弱性を抱えているが、大半の金融機関は健全性を維持している。また、与信を受ける企業や家計のバランスシートをみても、金融危機前のような大きな不均衡は溜まっていない。
このため金融環境は、株価下落や各種スプレッドの拡大といったかたちで急速にタイト化したが、今後次第に落ち着きを取り戻していくとオックスフォード・エコノミクスは予想している。
米連邦制度準備理事会(FRB)が、利上げをすぐに止めたり、年内に利下げに転じるといった見方にも与しない。予想以上に底堅い景気とインフレ下げ渋りで、インフレ懸念を完全に払拭したいというFRBの決意は相変わらず堅い。
逆に言えば、今後もFRBやECBの利上げが続けば、SVBショックが今後どの程度収束するかに止まらず、金融システムの綻びが他にも新たに出てこないかについても警戒を怠れない状況が続く。
金融政策の効果発現までの長い時間差(ラグ)を考えると、金融引締めが結果的に景気を過度に悪化させるリスクも高まっている。蓋然性は低いとしても、実体経済の悪化に金融システム不安定化が加わり、負の共鳴を始めるような最悪のシナリオも想定して十分な備えをしておくべきだ。