クレディ・スイス買収劇に波及した
米地銀破綻の「想定外」
シリコンバレー・バンク(SVB)という聞きなれない米国の中堅地方銀行の破綻を契機とする米国発の「地銀連鎖破綻」は、銀行不安の連想から欧州における大手銀行のクレディ・スイスの経営不安を再燃させることになり、「インフレ抑制」の利上げテーマだけに集中していた世界の金融市場は、いきなり「金融不安ムード」の渦の中に巻き込まれることになった。
主要市場では金融株への売りが殺到し、欧米の中央銀行が引き締めの停止あるいは緩和に転換するのではという思惑も強まって、世界の債券市場では短期から超長期まで利回りが急低下した。
為替市場ではしばらく忘れられていた「安全資産の円買い」が復活して、3月上旬には137円台で推移していたドル円は、130円台にまで突入した。
近年では自己資本比率の向上などを通じて「金融システムの安定化」が一つの通念として定着しており、特に米国市場が銀行破綻というリスクに無警戒になっていたことが、パニックを増幅した一因とも考えられる。
金利急上昇がもたらすリスクでは、レバレッジドローンやプライベートファンドなどが注視され、銀行はほぼ「ノーマーク」だった。